・・・すると、同じようなわるい事を明日やる。それでも成功しない。すると、明後日になって、また同じ事をやる。成功するまでは毎日毎日同じ事をやる。三百六十五日でも七百五十日でも、わるい事を同じように重ねて行く。重ねてさえ行けば、わるい事が、ひっくり返・・・ 夏目漱石 「二百十日」
・・・今日も待ち明日も待ち明後日も待つ。五六三十日の期が満つるまでは必ず待つ。時には我意中の美人と共に待つ事もある。通り掛りの上臈は吾を護る侍の鎧の袖に隠れて関を抜ける。守護の侍は必ず路を扼する武士と槍を交える。交えねば自身は無論の事、二世かけて・・・ 夏目漱石 「幻影の盾」
・・・明日食われるか明後日食われるかあるいはまた十年の後に食われるか鬼よりほかに知るものはない。この門に横付につく舟の中に坐している罪人の途中の心はどんなであったろう。櫂がしわる時、雫が舟縁に滴たる時、漕ぐ人の手の動く時ごとに吾が命を刻まるるよう・・・ 夏目漱石 「倫敦塔」
・・・ 明後日が初酉の十一月八日、今年はやや温暖かく小袖を三枚重襲るほどにもないが、夜が深けてはさすがに初冬の寒気が身に浸みる。 少時前報ッたのは、角海老の大時計の十二時である。京町には素見客の影も跡を絶ち、角町には夜を警めの鉄棒の音も聞・・・ 広津柳浪 「今戸心中」
・・・電信をお発し下すったなら、明後日午後二時から六時までの間にお待受けいたすことが出来ましょう。もうこれで何もかも申上げましたから、手紙はおしまいにいたしましょう。わたくしはきっと電信が参る事と信じています。どうぞこの会合をお避けなさらないで、・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
・・・いよいよあさってが結婚式という日の明方、カン蛙は夢の中で、「今日は僕はどうしてもみんなの所を歩いて明後日の式に招待して来ないといけないな。」と云いました。ところがその夜明方から朝にかけて、いよいよ雨が降りはじめました。林はガアガアと鳴り・・・ 宮沢賢治 「蛙のゴム靴」
・・・ 達二は、明後日から、また自分で作った小さな草鞋をはいて、二つの谷を越えて、学校へ行くのです。 宿題もみんな済ましたし、蟹を捕ることも木炭を焼く遊びも、もうみんな厭きていました。達二は、家の前の檜によりかかって、考えました。(あ・・・ 宮沢賢治 「種山ヶ原」
・・・『お前は明後日の学芸会で、何を云ったらいいか考えているだろう。』『うん、実はそうだ。』『そうか、そんなら教えてやろう。あさってお前は養鶏の必要を云うがいい。百姓の家には、こぼれて砂の入った麦や粟や、いらない菜っ葉や何か、たくさん・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・ 明後日村を出かけるという日の夕方近く、沢や婆は、畦道づたいに植村婆さまを訪ねた。竹藪を切り拓いた畑に、小さい秋茄子を見ながら、婆さんは例によってめの粗い縫物をしていた。沢や婆の丸い背を見つけると、彼女は、「おう、婆やでないかい」・・・ 宮本百合子 「秋の反射」
・・・ 明後日ごろお目にかかりにゆきたいと思って居ります。『プーシュキン全集』はまだ出て居りません。文芸時評的なものを年内に二つかきます。 本当にこの手紙は、去年とやいわん、今年とやいわん。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫