・・・ その一つであって二つにわかれたもののようにある重い条件をひっくるめて、私たちは自分の生活として持って、毎日の生活の中で、外ならぬ自分たち二人でそれを最善に向かって改善してゆくしかない。若い世代の結婚や家庭の持ちかたに見出されるべき新し・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・刻々の裡に最善をつくして生きようとしている私たちの意欲の表現としての文学は、昨日の文学をよりひろい歴史的な視野において見直すとともに、明日の世代の文化へと前進しなければならない。容易ならないその仕事のために、私たちの成長のための何かの善意の・・・ 宮本百合子 「序(『文学の進路』)」
・・・戦争が世界的な規模になって来ている今、若い世代は次第に沈着にめいめいの運命を担って最善をそこにつくしてゆく健気な心になっている。友情もそれらの波瀾を互の人生的なものとして凌いで行こうとするその雄々しさと思いやりとで結ばれて行くように変化しつ・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・それ故本を活々とした人間の努力の集積、それを最善につかって有益な結果をひき出す筈のものというような考えかたは、私としては随分後まで身につけなかった。 並べて見ているだけでよろこばしい亢奮を覚えるというような工合で、国民文庫刊行会で出版し・・・ 宮本百合子 「祖父の書斎」
・・・ 銀と黄金と私の心と―― 一つの大きなかたまりとなって偉大な宙に最善の舞を舞う。 稲の刈りあとと桑の枯木 田の稲の刈り取られたままひからびた様子は淋しい気持がするものだと先からの人達は云って居る。けれ共二十本・・・ 宮本百合子 「旅へ出て」
・・・そのような結果さえもたらした野蛮暗黒な当時の日本で、小林多喜二が一人の正直なインテリゲンツィアとして、自分の良心の声、自分の人間的確信に従って、そのとき最善と判断された解放運動の方向に従ったということにこそ、今日のすべての自覚あるインテリゲ・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・来年という年と、未来のためにもそこを最善に生きようとする私たちすべてに対して、心からの激励と祝福とがあってよいのだと思う。〔一九四〇年十二月〕 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・然し、周囲が最善の道として彼女に示す処は、唯その一路であると同時に、彼女自身も若しそれを断然拒絶するとしたら、果して後には何が、よりよき生活として見出されるだろうかと云う危惧を払い得ないのです。 始めそのことを聞いた時、第一自分の胸に来・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・今日及び明日の作家には、文学の大道から、今日おびただしい犠牲を通じて行われている心を痛ましめる衝突と一刻も早く望まれる最善の解決とを、歴史性の動向につき入って観察し描破しようとする熱意、力量の蓄積、鍛練が希望されている筈である。 ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・男性が最もよく女性の感化を受けた時、彼は天性の最善、最美な光輝を現します。それと同じに、女性は男性の正しいよい影響を受けると、彼女の生命の一番目覚ましい発育を遂げるのです。私共は、それ故、異性の間に生れる特殊な雰囲気は、人生に大切な一種の創・・・ 宮本百合子 「惨めな無我夢中」
出典:青空文庫