・・・ ウワバミ元気のこと[自注4]については、一同に朗読して聞かせたところ、御難という程でもなかったとのことです。あなたのトンビは、今考えれば本当に惜しいけれど、壺井さんが帰った時、勤めに行くのに着るものがなくて、あまり困ったのであげて、今・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ いささか余談にわたるけれども、ディケンズは、人生の底にふれた作家、不幸の底を知っている心の暖い民衆の芸術家といわれ、辻に立って本をよめぬ人々に小説を朗読したほとんどただ一人の作家なのであるが、私が彼に対してもつもっとも大きい不満の一つ・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
・・・彼女は昨今主としてチェホフの短篇の朗読者としてモスクワに暮している。彼女はピリニャークの家で酔って噪いだ。日本の作家がそれを見て幻滅した。然し私は知らない。自分で見ないうちは知らない。彼女がどんな彼女であるか。チェホフは人間の見えない三文文・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・一月九日を記念した詩が本ものの朗読者によって音楽に伴れて朗読される。クラブ劇研究員の芝居、ピオニェールの分列式。ピオニェールの活人画みたいな劇、移動劇団がやって来て大道具をつくって芝居する。キノがある――記念すべき一晩をゆっくり、集団的に、・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・に出演したメイエルホリド劇場の若手の俳優たちが、モスクワ芸術座の俳優のように鮮明な発音で朗読法をこなすまでには、大分時間がかかるという感じだった。 詩劇として、ベズィメンスキーのこの制作は、ソヴェトのプロレタリア文学の問題として各方面で・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・の中から朗読すべき部分を選んでいる。 開会がおくれて、すんだのは夜の十二時頃だった。一服しようと云うことになって、食堂へゾロゾロ下りた。――地下室なのだ。 ピリニャークが扉をあけて、サア、どうぞと云った。自分はその晩日本のキモノをき・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・オタンチン・パレオロガスというユーモラスな表現が女の知性の暗さに与えられているばかりか、ミュッセの詩の引用にしろ、タマス・ナッシの論文朗読の場面にしろ、女は厄介なもの、度しがたきものと観る漱石の心持は、まざまざと反映している。「猫」のなかで・・・ 宮本百合子 「漱石の「行人」について」
・・・公判廷は「ついに起訴状朗読にはいたらず午後五時三十分閉廷した」竹内被告をのぞく十一名の全被告が意見開陳にあたって、強力に、公訴取消しを要求した。その理由は、この事件の取調べは、検事側の威嚇と独断と術策によってすすめられたもので、人権は蹂躙さ・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ そしていかにも感謝の念にあふれた様な返事を書いて心の中に朗読しながら何とはなしの可笑しさに笑って居た。 葉書は、友達からカナリーが雛を育てたからあげようと云ってよこした。 育てるのは若しかすると楽しみかもしれないけれど、病気に・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・になり得る作品であると信じ、両親や友達を集め、朗読会を催した。彼が数ヵ月の間、部屋も出ず、レモン水と堅パンとで暮しながら書き上げた「クロンウェル」の効果は意外であった。 朗読は「少しの反響もなく、聴衆の陰鬱な沈黙と呆然自失のうちに」終り・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫