・・・……「雪がちらちら雨まじりで降る中を、破れた蛇目傘で、見すぼらしい半纏で、意気にやつれた画師さんの細君が、男を寝取った情婦とも言わず、お艶様――本妻が、その体では、情婦だって工面は悪うございます。目を煩らって、しばらく親許へ、納・・・ 泉鏡花 「眉かくしの霊」
・・・金八は蝶子の駈落ち後間もなく落籍されて、鉱山師の妾となったが、ついこの間本妻が死んで、後釜に据えられ、いまは鉱山の売り買いに口出しして、「言うちゃ何やけど……」これ以上の出世も望まぬほどの暮しをしている。につけても、想い出すのは、「やっぱり・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・然るに今、多勢の妾を養い、本妻にも子あり、妾にも子あるときは、兄弟同士、父は一人にて母は異なり。夫婦に区別ありとはいわれまじ。男子に二女を娶るの権あらば、婦人にも二夫を私するの理なかるべからず。試に問う、天下の男子、その妻君が別に一夫を愛し・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・ ○岡田、本妻を出す。男の子一人不良 あとにせい入る。 ×生存難 T 母、違う。 やさしくして表に出して叱らず「本当に困るんですの」と人に云う。 そういうことによって spoil され、活・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
出典:青空文庫