・・・また、この外曾祖父が或る日の茶話に、馬琴は初め儒者を志したが、当時儒学の宗たる柴野栗山に到底及ばざるを知って儒者を断念して戯作の群に投じたのであると語ったのを小耳に挟んで青年の私に咄した老婦人があった。だが、馬琴が少時栗山に学んだという事は・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・ 二 正月前に、団栗山を伐った。樹を切るのは樵夫を頼んだ。山から海岸まで出すのは、お里が軽子で背負った。山出しを頼むと一束に五銭ずつ取られるからである。 お里は常からよく働く女だった。一年あまり清吉が病んで仕事・・・ 黒島伝治 「窃む女」
・・・ 鴎外の歴史的題材を扱った作品の、略「栗山大膳」ぐらいまでを歴史小説と云い、「澀江抽斎」「伊沢蘭軒」などを事実小説とする斎藤茂吉氏の区分も、私たちには何となしぴったりしない。最後の二作は伝記であると思われる。小説という文字が使われなけれ・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・○野菜市場。近さん120の由。武運長久と書いてあったが「武運長久が襷がけならいいんだろ。この頃は白襷がはやるから。こんど出来た字かもしれない」○栗山の婆さん「自殺すると云っちょるげな、息子に話しもめるさかい と云っちょる」・・・ 宮本百合子 「Sketches for details Shima」
出典:青空文庫