・・・その歌集はおそらく今の歌壇に一つの異彩を放つばかりでなく、現代世相の一面の活きた記録としても意義のあるものになるだろうと思っている。 寺田寅彦 「宇都野さんの歌」
・・・ 短歌は日本の民族がもって来た文学のジャンルですから、それを破壊するより、そこに新しい真実と実感がもられるように、歌壇の下らない宗匠気風にしみないみなさまの御努力が希われます。 登龍のむずかしいアララギ派に云々とかかれている方のお言・・・ 宮本百合子 「歌集『仰日』の著者に」
・・・その点で、この二百頁に満たぬ一冊の歌集がきょうの日本の歌壇に全く新しい価値をもって現れているという渡辺さんの言葉は確に当っていると思われます。そして、それぞれの歌がそれぞれの作者の生活の面を反映させているなかにも、私が心を動かされたのは、「・・・ 宮本百合子 「歌集『集団行進』に寄せて」
・・・一つは、明治・大正・昭和に亙る聖代に日本古来の文学的様式である和歌の歩んで来た成果を収めて、今日の記念とする意味であり、他方には純粋に歌壇の歴史的概括としての集成の事業である。 この「新万葉集」のために歌稿をよせた作者の数は一万八千人で・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・という村の相当の家に生れた長塚節は水戸中学を卒業しないうちに病弱で退学し『新小説』などに和歌を投稿しはじめた。 正岡子規が有名な「歌よみに与ふる書」という歌壇革新の歌論を日本新聞に発表したのは明治三十一年であった。当時十九歳ばかりであっ・・・ 宮本百合子 「「土」と当時の写実文学」
出典:青空文庫