・・・俗にいう御身分も、財産も、僕の生家などとは、まるで段違いなのである。謂わば、僕の生家のほうで、交際をお願いしているというような具合いなのである。まさしく、殿様と家来である。当主の惣兵衛氏は、まだ若い。若いと言っても、もう四十は越している。東・・・ 太宰治 「水仙」
・・・私もさっそく四人の大学生の間に割込んで、先生の御高説を拝聴したのであるが、このたびの論説はなかなか歯切れがよろしく、山椒魚の講義などに較べて、段違いの出来栄えのようであったから、私は先生から催促されるまでも無く、自発的に懐中から手帖を出して・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・縁なき衆生は度しがたしとは単に仏法のみで言う事ではありません。段違いの理想を有しているものは、感化してやりたくても、感化を受けたくてもとうていどうする事もできません。 還元的感化と云う字が少々妙だから、御分りにならんかと思います。これを・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・を円筒上の人物に着せたとなると、その甲冑は、四肢などに対するとは全く段違いの細かな注意をもって表現されている。甲冑の材料である鉄板の堅い感じ、その鉄板をつぎ合わせている鋲の、いかにもかっちりとして並んでいる感じ、そういう感じまでがかなりはっ・・・ 和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
出典:青空文庫