おきつうみ【沖つ海】
海の沖のほう。沖合の海。「—みなそこ深く思ひつつ裳引き馴らしし菅原の里」〈夫木・三一〉
おきつかい【沖つ櫂】
沖をこぐ船の櫂。「—いたくな撥 (は) ねそ」〈万・一五三〉
おきつかぜ【沖つ風】
沖を吹く風。また、沖から吹いてくる風。「若の浦に白波立ちて—寒き夕 (ゆふへ) は大和し思ほゆ」〈万・一二一九〉
おきつくに【沖つ国】
沖のかなたの遠い国。黄泉 (よみ) の国をさすかともいう。「—領 (うしは) く君が塗り屋形丹塗りの屋形神が門渡る」〈万・三八八八〉
おきつしまもり【沖つ島守】
沖にある島の番人。「わが髪の雪と磯辺の白波といづれまされり—」〈土佐〉
おきつしまやま【沖つ島山】
滋賀県の琵琶湖にある沖島 (おきのしま) の古称。[歌枕]「近江 (あふみ) の海—奥まけてわが思ふ妹が言の繁けく」〈万・二四三九〉
おきつしらなみ【沖つ白波】
沖に立つ白波。「なごのうみの霞の間よりながむれば入る日をあらふ—」〈新古今・春上〉 [補説]沖の白波が「立つ」ところから「立田山」の、また、白波の「しら」と同音であるところから「知らず」の序詞ともなる。「海 (わだ) の底—竜田山」〈万・八三〉 「近江の海—知らねども」〈万・二四三五〉
おきつたまも【沖つ玉藻】
沖の美しい藻。「靡 (なび) く」の序詞として多く用いられる。「わたつみの—のなびき寝む」〈万・三〇七九〉
おきつとり【沖つ鳥】
[枕] 1 沖にいる水鳥の意から「鴨 (かも) 」にかかる。「—鴨といふ舟の帰り来ば」〈万・三八六六〉 2 沖にいる水鳥「䳑鴨 (あじがも) 」と同音であるところから、地名の「味経 (あぢふ) 」にかかる。「—味経の原に」〈万・九二八〉 3 沖つ鳥の首を曲げて胸を見るようすから「胸 (むな) 見る」にかかる。「黒き御衣 (みけし) をま具 (つぶさ) に取り装ひ—胸見る時」〈記・上・歌謡〉
おきつなみ【沖つ波】
[名]沖に立つ波。「—来寄する荒磯 (ありそ) をしきたへの枕とまきて寝 (な) せる君かも」〈万・二二二〉 [枕]波の動く状態から「競 (きほ) ふ」「頻 (し) く」「高し」「立つ」「撓 (とを) む」などにかかる。「—撓む眉引 (まよび) き」〈万・四二二〇〉 「—たかしの浜の」〈古今・雑上〉