・・・日本人でありながらロシア人やアメリカ人になったような気持ちで浮かれた事を満載した書物はよく売れると見えて有り過ぎるほどあるのに、連句の本などはミイラかウニコーンを捜す気で捜さなければ見つからない。これが何よりの証拠である。ただ近来少数ではあ・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・其歓心を買い其機嫌を取らんとし、衣裳万端その望に任せて之を得せしめ、芝居見物、温泉旅行、春風秋月四時の行楽、一として意の如くならざるものなければ、俗に言う御心善の内君は身の安楽を喜び、世間の贅沢附合に浮かれて内を外にし、家内の取締は扨置き子・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・故に我輩は婦人の外出を妨げて之を止むるに非ず、寧ろ之を勧めて其活溌ならんことを願う者なれども、子供養育の天職を忘れて浮かれ浮かるゝが如きは決して之を許さず。此点に就ては西洋流の交際法にも感服せざるもの甚だ多し。又婦人は其身の境遇よりして家に・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・……いわばまあ、上っ面の浮かれに過ぎないのだけれど、兎に角上っ面で熱心になっていた。一寸、一例を挙げれば、先生の講義を聴く時に私は両手を突かないじゃ聴かなんだものだ。これは先生の人格よりか「道」その物に対して敬意を払ったので。こういう宗教的・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・ 清作もすっかり浮かれて云いました。「さあ来い。へたな方の一等から九等までは、あしたおれがスポンと切って、こわいとこへ連れてってやるぞ。」 すると柏の木大王が怒りました。「何を云うか。無礼者。」「何が無礼だ。もう九本切る・・・ 宮沢賢治 「かしわばやしの夜」
出典:青空文庫