この作品は「新聞配達夫」とは又別の意味で一気に終りまで読ませ、しかもなかなかひきつけるところのある作品である。病苦をめぐる良人の感情、妻の感情など素直にひたむきに描れているし、淫売屋での二人の女の会話のところなども自然であ・・・ 宮本百合子 「入選小説「毒」について」
・・・ 十九世紀中葉のその時代のイギリスで、病人の看護をするのが聖業であるというような女は、他のまともな正業には従えない女、主としてもう往来を歩くには年をとりすぎたアルコール中毒の淫売婦あがりの婆さんたちであった。こういう看護婦というもの・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・ 十八九歳でパン焼釜の前に縛りつけられていた時分、彼は仲間に淫売窟へ誘われた。彼はそこへついて行き、だが自分は放蕩をせず、不幸な娘たちといろいろ話し、そういう場所へ来る大学生が、彼等の所謂教養にもかかわらず何故こんな性質のいい娘がこうい・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・ここには、本を読んだからと云って殴られる台処働きの小僧の中に燃えている人間的尊厳の抗議、給料を祖父にとられる貧しい小僧だから、淫売をする洗濯女といちゃついて、酔倒れた兵卒のポケットから財布を掠めもするだろうと思われ、全然事実とは違うその卑俗・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・例えば、パン職人たちの唯一の歓びは、給金日に淫売窟へ出かけることであった。すると、そこの「喜びのための娘たち」は酔っぱらいながら彼等に、学生や官吏や「一般に小綺麗な連中」に対する悪意のある哀訴をした。それをきくと、「教育のある人達に対する片・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ ゴーリキイは、淫売婦や貧しい大学生、人生での敗残者などがごたごた棲んでいるカザンの貧民窟の一隅に、急進的な一人の学生と暮した。そこにはたった一つの寝台があるだけであった。学生とゴーリキイとは夜昼交代にそこへ寝て、ゴーリキイはヴォルガ河・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・ ゴーリキイは淫売婦や貧しい大学生、人生の敗残者などがごたごた詰っているカザン市の貧民窟の一隅に、或る急進的な学生と暮した。 寝台が一つしかなかった。学生とゴーリキイとは夜昼かわり番こにその寝台に眠り、朝になるとゴーリキイは「飢えな・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫