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・・・ しかし、空拳と無芸では更に成すべき術もなく、寒山日暮れてなお遠く、徒らに五里霧中に迷い尽した挙句、実姉が大邱に在るを倖い、これを訪ね身の振り方を相談した途端に、姉の亭主に、三百円の無心をされた。姉夫婦も貧乏のどん底だった。「百円は・・・
織田作之助
「勧善懲悪」
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・・・ けだしこの一味、つまりは聖人の本意にも非ず、また後世の儒者にても、その本意に背くを知りてこれを弁ずる者ありといえども、いかんせん、世人の精神に感ずるところは、道徳の一品をもって身を立るの資本となし、無芸にても無能にても、これに頓着せざる者・・・
福沢諭吉
「小学教育の事」