・・・ 普通なら、横面のひとつも撲りつけてから、「――お前のような奴の片棒をかつぐのは、もう御免だよ」 と、断るところだ。それを、そんな風にあっさり引き受けてしまったのは、欲から出たことだ……と、思われたくない。事実またそんな気はなか・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・勝元は宗全とは異って、人あたりの柔らかな、分別も道理はずれをせぬ、感情も細かに、智慧も行届く人であったが、さすがに大乱の片棒をかついだ人だけに、やはり※いところがあったと見えて、愛宕山権現に願掛けした。愛宕山は七高山の一として修験の大修行場・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・ クラブの監督がこみ合う尻や背中をかきわけてコムソモールに片棒かつがせ長いベンチをかつぎこんできた。 ――どこへ? ――ここ、此処! 第一列の前へさらに補助席だ。たちまち、舞台横の開いた扉の辺に幾重にもかたまっていた若い男女・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・爺さんまで出て腰の煙草入を振り振りモッコの片棒担いでいる。 附近に陸軍飛行機学校、機関銃隊、騎兵連隊、重砲隊などがある。開墾部落はその間に散在しているのだ。 南京豆と胡麻畑の奥に、小さい藁葺屋根の家が見えた。われわれ一行三人が、前庭・・・ 宮本百合子 「飛行機の下の村」
出典:青空文庫