・・・だから財産はなくても、ちゃんと独立のできる男でなければ。青木も意気地がないじゃないか。あれほど望む結婚なら、もっと何とかできそうなものだ。あれではまるでこっちの親類を背景にして、ふみ江さんをもらったようなもんだからな」「え、あの人両親の・・・ 徳田秋声 「挿話」
・・・ 次に内容と全く独立した。と云うより内容のない芸術がありますが、あれは私にも少々分る。鷺娘がむやみに踊ったり、それから吉原仲の町へ男性、中性、女性の三性が出て来て各々特色を発揮する運動をやったりするのはいいですね。運動術としては男性が一・・・ 夏目漱石 「虚子君へ」
・・・各国家民族が自己を越えて一つの世界を構成すると云うことは、ウィルソン国際連盟に於ての如く、単に各民族を平等に、その独立を認めるという如き所謂民族自決主義ではない。そういう世界は、十八世紀的な抽象的世界理念に過ぎない。かかる理念によって現実の・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・ 魚の辞典を引いてみると、ドンコはドンコ属という独立した一科になっている。辞書や伝承によって、鈍甲、胴甲、貪魚、鈍魚、などという字があててあるが、どれがほんとうなのか、私は知らない。しかし、鈍魚という字が面白く、また、ドンコの性格をよく・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
・・・く長じて家の娘と結婚、養父母は先ず是れにて安心と思いの外、この養子が羽翼既に成りて社会に頭角を顕すと同時に、漸く養家の窮窟なるを厭うて離縁復籍を申出し、甚だしきは既婚の妻をも振棄てゝ実家に帰るか、又は独立して随意に第二の妻を娶り、意気揚々顔・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・で、終には、親の世話になるのも自由を拘束されるんだというので、全く其の手を離れて独立独行で勉強しようというつもりになった。 が、こうなると、自分で働いて金を取らなきゃならん。そこであの『浮雲』も書いたんだ。尤も『浮雲』以前にも翻訳などは・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
一、ペンネンネンネンネン・ネネムの独立 〔冒頭原稿数枚焼失〕のでした。実際、東のそらは、お「キレ」さまの出る前に、琥珀色のビールで一杯になるのでした。ところが、そのまま夏になりましたが、ばけものたちはみんな騒ぎ・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・又、他人の恋愛問題と自分のそれとは全然個々独立したもので、それぞれ違った価値と内容運命とを持っている筈のものです。恋愛とさえ云えば、十が十純粋な麗わしい花であるとも思えません。 私は、恋愛生活と云うものを余り誇張してとり扱うのは嫌いです・・・ 宮本百合子 「愛は神秘な修道場」
・・・一作は次ぎの一作とは全く独立はしているとしても、作者の意識というものは左様に都合よく独立し得られるものだとは私には思えない。『春琴抄』における眼を突く時間の早さについてうんぬんしたのも、私にはここに意見があったのである。 ついでに宇野浩・・・ 横光利一 「作家の生活」
・・・先生がインドにおいてどういうふうに独立を鼓吹したか、あるいは美術院の画家たちにどういうふうに霊感を与えたか、さらにまた五浦の漁師たちをどういうふうに煽動して新式の網を作らせたか。それらのことについては自分は何も知らない。しかし先生が最もよき・・・ 和辻哲郎 「岡倉先生の思い出」
出典:青空文庫