・・・ブェノスアイレスの第十四回国際ペンクラブ大会へ出席した島崎藤村が、この大会の世界ファシズムに反対する決議や世界平和と文化を守る決議に当惑して、日本の文学者として何一つ責任ある発言をさけてかえってきたことは、当時の日本の状態をあからさまに語っ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・作家の中で、執筆禁止について、発言し、なにかの意味で正しくふれた人々は、ごく少数であった。ましてや、温和なチェホフが、壮年のゴーリキイを除名したアカデミーにたいして、自分がアカデミシャンであることを恥じると抗議したような、温和にして剛毅な文・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・委員の人選も一種のあまくだりであったにしても、民主化について正直に発言し行動することのできる人々が選ばれたのであった。 ところが、さまざまの委員会が、民主化のための委員会として組織された当時、吉田茂は、占領政策に対して危惧をいだいていた・・・ 宮本百合子 「「委員会」のうつりかわり」
・・・若い人々は、まず基本的命題としてこの自主的発言をした上できょう日本の新聞に溢れている戦争挑発の記事をよむべきで、しかもそれは全世界の青年男女の発言である、平和要求の発言を自身に向ってもはっきりとした上で、キリストへの信仰をもつものならその実・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・私も自分の利益のために粘っているのではない、国を憂えることは諸君と同じだが、方法が違う、と意見を披瀝しはじめたら、傍から楢橋書記翰長が、なお言をつごうとする首相に「『ストップ』と命じ、首相にこれ以上の発言を許さなかった」という意味深長な寸劇・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・、検事がそれほどこの事件の社会問題の面を強調なさるならば、すべての勤労人民の生活安定の問題、託児所の問題について広い社会問題として労働組合も学生も、いろいろ私ども婦人たちも、みんなそれについては社会的発言をしておりますし、する組織をもってお・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・榕子の言葉は、こんにち、こんどは美貌の女の唇をとおして日本の中で、語られる極めてインヒューマンな発言である。自分の夫を、なぐったり蹴ったりして殺した下士官広瀬に復讐を思い立つが、「目の前で見ていると、それは男らしくて美しい顔だちの人で」その・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・割りあてられた話を終っていたわたしは発言を求めて「小さいものの意味」についてのべた。政治が、わたしたちの社会的な良心と道義、そして良識の判断に土台をおいた動きである以上、明日に育つきょうの小さいものを正しく評価するということは、全く当然なこ・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・そのあまりの無法さは、直接その刃の下におかれた人々の正気を狂わせたし、その光景全般の恐ろしさから、すべての知識人、勤労者、農民の精神と判断と発言とを萎縮させた。徳川時代のとおり、ご無理ごもっともと、ばつを合わせつつ、今日私たちの面している物・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ その討論の時期に、伊藤整も東京新聞の文芸欄で発言した。肉体小説、中間文学に対する彼のもの言いは、非常に機智的であった。否定するかとみれば、一部の肯定もあり、さりながら単純な肯定一本で貫かれているという見解でもなかった。伊藤整を、そのよ・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
出典:青空文庫