・・・そうしてそのおのおのが七曜日のいずれに起こる確率も均等であると仮定すれば、三度続けて金曜日に起こるという確率は七分の一の三乗すなわち三百四十三分の一である。しかしこれはまた、木曜が三度来る確率とも同じであり、また任意の他の組み合わせたとえば・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・年数と干支が全部合理的につじつまを合わせて、念入りに誤植されるという偶然の確率はまず事実上零に近いからである。 それだから年号と年数と干支とを併記して或る特定の年を確実不動に指定するという手堅い方法にはやはりそれだけの長所があるのである・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・従って先ず新星が現われて、それからわれわれがそれを発見するという確率は、二つの小さな分数の相乗積であるから、つまりごく小さいもののまだ小さい分数に過ぎない。これに反して毎晩欠かさず空の見張りをしている専門家にとっては、「偶然」はむしろ主に星・・・ 寺田寅彦 「小さな出来事」
・・・ 個々の乗客が全く偶然的に一つの停留所に到着したときに、ある特別な間隔に遭遇するという確率は、あらゆる種類の間隔時間とその回数との相乗積の総和に対するその特別な間隔の回数と時間との積の比で与えられる。そこでたとえば前の例について言えば二・・・ 寺田寅彦 「電車の混雑について」
・・・日曜に天気のいいという確率、家族の甲乙丙の銘々が暇だという三つの確率、この四つがそれぞれ二分の一ずつだとしても、十六分の一しか都合のいい日の確率はない訳であるから、統計的に云えば思い立ってから平均十六週すなわち約四ヶ月待たなければならなかっ・・・ 寺田寅彦 「箱根熱海バス紀行」
・・・ 世界じゅうの人間の元祖が一つであろうという事は単に確率論的の考察からもいちばん考えやすい事であるが、今ここで軽々しくそういう大問題に触れようとは思わない。ただ少なくも動物学上から見て同種な Homo Sapiens としての人間の世界・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・もしそうだとすれば先生と弟子とが同じ病気にかかる確率は、全く縁のない二人がそうなるより大きいかもしれない。病気が同じならば同じ時候によけいに悪くなるのはむしろありそうな事である。こんな事を考えたりした。そしてその時にはこれがたいへんに確実な・・・ 寺田寅彦 「病室の花」
・・・ この偶然な二つの出来事の合致が起こるという確率は正確には計算しにくいが、とにかく千分の一とか二千分の一とかいう小数である。しかしそういうめったに起こりそうもないことが実際に起こることがあるというのが、確率論のまさしく教えるところである・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・原子の場合にわれわれは個々の原子の状態を確定する代わりに、ただその確率を知ると同様に、たとえば割れ目の場合でも精密な形を記載することはできなくても、その統計的特徴を把握することができるであろうと想像するのは、必ずしも不倫ではあるまいと思われ・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・これだけから見ると少なくもその曲線の示す範囲内では、四十二歳における死亡の確率が特別に多くはないという漠然とした結論が得られそうに見える。 しかし統計ほど確かなものはないが、また「統計ほど嘘をつくものはない」という事は争われないパラドッ・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
出典:青空文庫