・・・燈火管制なのだ。もうこれは、演習でないのだ。心の異様に引きしまるのを覚える。でも、これは少し暗すぎるのではあるまいか。こんな暗い道、今まで歩いた事がない。一歩一歩、さぐるようにして進んだけれど、道は遠いのだし、途方に暮れた。あの独活の畑から・・・ 太宰治 「十二月八日」
・・・の中に、完全に燈火管制された都会の夜の物凄い気持を、自ら仮死状態に陥った都市の凄さを描いている。レーンの小説「戦争」又はレマルクの「西部戦線異状なし」バルビュスの「砲火」などを読んだ人々は、燈火管制下の夜の凄さというものは、仮死どころか、そ・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・ 丁度燈火管制の晩であった。二人は市電の或る終点で降りて、一斉に街燈が消され、月光に家並を照らし出されている通りを家まで歩いた。 ふだん街の面をぎらつかせているネオンライトや装飾燈が無く、中天から月の明りを受けて水の底に沈んだような・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
出典:青空文庫