・・・ 性的交渉の苦々しさを知らぬ女として生活し得る社会になってこそ、そのような恋愛をし得てこそ、始めて女は絶大のよろこびをもって、階級的統一体としての美を男の内にも発見し描き得る。自身のうちに発見し、描き得るように。・・・ 宮本百合子 「婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?」
・・・「彼が自分のドラマの中に導入した凡ての荒唐無稽さにも拘らず『マクベス』はそれでも中世紀のゴシック風の寺院の如く巨大なる、絶大なる作品である」「人類の全世界史的発達の各々の瞬間は、同様に豊富なる収穫を詩のために与えるものだということの証拠・・・ 宮本百合子 「ベリンスキーの眼力」
・・・―― 然しながら、マクシム・ゴーリキイはその退屈をこらえ「絶大な緊張をもって、草鞋虫の這っている窖の壁を見つめ、坐りつづける。」彼の内心に答を求めて疼いている数限りのない「何故?」がそこから彼を去りかねさせるのであった。マクシムは、抑え・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・―― 然しながら、マクシム・ゴーリキイはその退屈をこらえ、「絶大な緊張をもって、草鞋虫の這っている窖の壁を見つめ、坐りつづける。」彼の内心に疼いている数限りのない「何故?」がそこから彼を去りかねさせるのであった。マクシムは、抑え難い感動・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ 戦争の年々の絶大なマイナスのために日本の民主化は今日混乱し、独善にはびこられてもいる。作家も評論家も、この混迷からまったく自由にはなっていない。日本の民主主義革命の現在の本質をはっきりつかまないところからおこるブルジョア民主的な自我確・・・ 宮本百合子 「両輪」
・・・わが骨肉の老朽を自ら感じる者等は活力に溢れ、日々の冒険で世界を拡張させて行く者共に、絶大な期待と信任を覚えたに違いない。彼等は一つ一つに新たな発見をすることが如何程、自分等皆の生活に重大な意義を持っているか、複雑な近代人の持ち得る以上の直覚・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
・・・彼らの心には、絶大微妙な仏力に対する帰依の念が、おいおい高まって来る。そうしてそれは音楽が与える有頂天な心持ちとぴったり相応じている。時々あの高い声の独唱が繰り返されるのも、そのたびごとにいくらか合唱が急調になって行くのも、皆彼らの歓喜をあ・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
出典:青空文庫