・・・そのことを、男達に知られるのがいやさに、男の職員が女の方にゆくとやかましく云う。宍戸、宿直の日、小使部屋に居た そこへ女のひとが来て、喋って居るところへ、ひょっくり竹内入って来て、翌日やめさせるとか何とか云う、やはり臆病からなり。・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・「そりゃよかった、あれは我々の農園産ですよ、職員がみんなで作ったんです」 戦争が進んで、研究所員の生活不安がつのって来たとき、研究を継続するためにも吉岡たちが先頭にたって、広大な敷地のなかに農園をはじめたのであった。「――よかっ・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・新宿駅前広場は、城北地区の解散場であったが、そちらの行進の先頭を切ったのは簡易保険局の女子職員で、この間モスクワのメーデーと写真に紹介されたとおり、奇麗な花束を一人一人が抱えて行進した。そして、新協劇団のトラックが劇場人のメーデーらしく、揃・・・ 宮本百合子 「メーデーに歌う」
・・・終戦直後、大きな軍需会社は即日職員の解雇をした。そして、一人当りいくらかの纏まった金を、解雇手当として与えた。軍人は部隊の解散に伴って沢山の資材を背負い出しもしたし、金も貰った。特に将校階級がトラックを使ってまで、軍の物資を分け取りしたこと・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・それは学校教員・警察官その他待遇職員の未亡人たちが遺族扶助料をもらいながら再婚し、しかも扶助料をとりあげられぬため、内縁関係にしているのがおびただしい数にのぼるので、東京府の恩給掛はこの際徹底的に調べて、内縁でも再婚している未亡人の扶助料は・・・ 宮本百合子 「私の感想」
・・・ 今日の主人増田博士の周囲には大学時代からの親友が二三人、製造所の職員になっている少壮な理学士なんぞが居残って、燗の熱いのをと命じて、手あきの女中達大勢に取り巻かれて、暫く一夕の名残を惜んでいる。 花房という、今年卒業して製造所に這・・・ 森鴎外 「里芋の芽と不動の目」
出典:青空文庫