・・・しかし彼は衣食する上にはある英字新聞の記者を勤めているのだった。僕はどう云う芸術家も脱却出来ない「店」を考え、努めて話を明るくしようとした。「上海は東京よりも面白いだろう。」「僕もそう思っているがね。しかしその前にもう一度ロンドンへ・・・ 芥川竜之介 「彼 第二」
・・・裸になった彼女は花束の代りに英字新聞のしごいたのを持ち、ちょっと両足を組み合せたまま、頸を傾けているポオズをしていた。しかしわたしは画架に向うと、今更のように疲れていることを感じた。北に向いたわたしの部屋には火鉢の一つあるだけだった。わたし・・・ 芥川竜之介 「夢」
・・・いくつの英字から成り立っているか、指を折って勘定してごらんなさい。そうれ、十二でしょう? 十二です。」 しかし、私の勘定では、十三であった。「たしかに、立川は神聖な土地なのです。三鷹、立川。うむ、この二つの土地に何か神聖なつながりが・・・ 太宰治 「女神」
・・・ ゆえに本塾の教育は、まず文学を主として、日本の文字文章を奨励し、字を知るためには漢書をも用い、学問の本体はすなわち英学にして、英字、英語、英文を教え、物理学の普通より、数学、地理、歴史、簿記法、商法律、経済学等に終り、なお英書の難文を・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」
出典:青空文庫