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・・・を生垣にして置いて、春先に成ると柔かい新萌えの芽を摘んで、細かく刻んで、胡桃やお味噌と混ぜて食べるのである。 頭に鍔広の帽子を被って、背中に山や沼を吹き越して来る涼風を受けながら、調子付いてショキリショキリと木鋏を動して居ると、誰か彼方・・・
宮本百合子
「麦畑」
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・・・で、この時期に萌えいでた芽はたとえそれが生活の中心へ来なくても、一生その意義を失わないものだと聞きました。たとえば芸術家の晩年の傑作などには、よく青春期の幻影が蘇生し完成されたのがあるそうです。また中年以後に起こる精神的革命なども、多くはこ・・・
和辻哲郎
「すべての芽を培え」