・・・少年時代からの親交であって度々鴎外の家に泊った事のある某氏の咄でも、イツ寝るのかイツ起きるのか解らなかったそうだ。 鴎外の花園町の家の傍に私の知人が住んでいて、自分の書斎と相面する鴎外の書斎の裏窓に射す燈火の消えるまで競争して勉強するツ・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・たとか、それから、ここのご主人がいまのこの家をおつくりになる前に奥さまと駒込のアパートにちょっとの間住んでいらして、その折、笹島先生は独身で同じアパートに住んでいたので、それで、ほんのわずかの間ながら親交があって、ご主人がこちらへお移りにな・・・ 太宰治 「饗応夫人」
・・・故作家と生前、特に親交あり、いま、その作家を追慕するのあまり、彼の戯れにものした絵集一巻、上梓して内輪の友人親戚間にわけてやるなど、これはまた自ら別である。あかの他人のかれこれ容喙すべき事がらでない。 私は一読者の立場として、たとえばチ・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・一つにはこれらの画家が子規と特別な親交があって、そうしてこの病友を慰めてやりたいという友情が籠っていたであろうし、また一つには当時他に類のなかったオリジナルでフレッシな雑誌の体裁を創成するということに対する純粋な芸術的な興味も多分に加わって・・・ 寺田寅彦 「明治三十二年頃」
・・・その頃の友人の中には George Darwin も居たが、違った方面の友では Arthur Balfour すなわち後の首相バルフォーア卿と親交を結んだ。これが彼の生涯に大きな影響をすることになったのである。 一八六七年の八月に始めて・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・転任して来たときからマルクス家と親交があった。この枢密顧問官は、役人くさくない聰明な人がらで、ホーマーやシェクスピアを愛読していた。当時の狭い社会で枢密顧問官といえば、貴族的な上流人と考えられていた。小さなワイマールの市で枢密顧問官であった・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・某はこの技術家と特に親交があって、将来はこの人に経営させる口約もしたのだそうである。 最近資本系統が代って、その技術家はやめることになり、退職金を半分貰ったきりなので、愈々そのドックをやりはじめたいと、O・Tと交渉したが、某は既に没して・・・ 宮本百合子 「くちなし」
・・・早くからドイツやフランスに住み、カール・リープクネヒトなどと親交のあった大学教授レイスネルの家庭には、革命に対する真面目な関心があって、「十月」の頃ラリーサはまだ二十三歳だった。が、小さい時から革命的影響をうけていた彼女は「十月」と同時に、・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・「自分は故国にいる無限に多い他人――その他人の中でもよりよい人々の中の最初の人間と私との親交は、このようにして終った。」 この物語はゴーリキイにとって記憶から消えぬものであったと共に、今日の読者である私たちの心をも少なからず打つものがあ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・「自分は故国にいる無限に多い他人――その他人の中でもよりよい人々の中の最初の人間と私との親交は、このようにして終った。」 この物語はゴーリキイにとって記憶から消えぬものであったと共に、今日の読者である私たちの心をも少なからず打つものがあ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
出典:青空文庫