・・・…… この解釈の是非はともかく、半三郎は当日会社にいた時も、舞踏か何かするように絶えず跳ねまわっていたそうである。また社宅へ帰る途中も、たった三町ばかりの間に人力車を七台踏みつぶしたそうである。最後に社宅へ帰った後も、――何でも常子の話・・・ 芥川竜之介 「馬の脚」
・・・が、彼等は――少くとも妻は、僕のこう云う素振りに感づくと、僕が今まで彼等の関係を知らずにいて、その頃やっと気がついたものだから、嫉妬に駆られ出したとでも解釈してしまったらしい。従って僕の妻は、それ以来僕に対して、敵意のある監視を加え始めた。・・・ 芥川竜之介 「開化の良人」
・・・歌は――文学は作家の個人性の表現だということを狭く解釈してるんだからね。仮に今夜なら今夜のおれの頭の調子を歌うにしてもだね。なるほどひと晩のことだから一つに纏めて現した方が都合は可いかも知れないが、一時間は六十分で、一分は六十秒だよ。連続は・・・ 石川啄木 「一利己主義者と友人との対話」
・・・ 魚住氏はこの一見収攬しがたき混乱の状態に対して、きわめて都合のよい解釈を与えている。曰く、「この奇なる結合名が自然主義である」と。けだしこれこの状態に対する最も都合のよい、かつ最も気の利いた解釈である。しかし我々は覚悟しなければならぬ・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・ 貧乏人の子だくさんというようなことも、僕の今の心理状態と似よった理由で解釈されるのかもしれない。そうかといって、結婚二十年の古夫婦が、いまさら恋愛でもないじゃないか。人間の自然性だの性欲の満足だのとあまり流行臭い思想で浅薄に解し去って・・・ 伊藤左千夫 「去年」
・・・るから、其人を待って始めて、現わるるもので、記述も議論も出来ないのが当前である、茶の湯に用ゆる建築露路木石器具態度等総てそれ自身の総てが趣味である、配合調和変化等悉く趣味の活動である、趣味というものの解釈説明が出来ない様に茶の湯は決して説明・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・「それは僕に解釈さして呉れるなら」と、僕は口を出して、「気狂いとまで一方に思った軍曹の、大胆な態度に君が深く打たれたので、夢中な心にもそれを忘れかねたんだろう。」「それ、さ。」友人は卓を打って、「僕は今でもその姿が見える様なんや。岡・・・ 岩野泡鳴 「戦話」
・・・最も善意に解釈して呉れる人さえが打つ飲む買うの三道楽と同列に見て、我々文学に親む青年は、『文学も好いが先ず一本立ちに飯が喰えるようになってからの道楽だ』と意見されたものだ。夫が今日では大学でも純粋文学を教授し、文部省には文芸審査委員が出来て・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・というは、取りも直さず文学のような生柔しい事ではとても自分の最大苦悶を紛らす事が出来ないという意味にも解釈される。 世の中には行詰った生活とか生の悶えとか言うヴォヤビュラリーをのみ陳列して生活の苦痛を叫んでるものは多いが、その大多数は自・・・ 内田魯庵 「二葉亭四迷」
・・・ 今時の聖書研究は大抵は来世抜きの研究である、所謂現代人が嫌う者にして来世問題の如きはない、殊に来世に於ける神の裁判と聞ては彼等が忌み嫌って止まざる所である、故に彼等は聖書を解釈するに方て成るべく之れを倫理的に解釈せんとする、来世に関する聖・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
出典:青空文庫