・・・また文部省内には教育映画に関する調査委員会のようなものが設けられてあるそうであるが、その業績として世間一般に広く認められているものはないようである。 しかしこの問題は現在考えられているよりはもっともっと重大な問題であって、当局者は勿論日・・・ 寺田寅彦 「教育映画について」
・・・しかし多くの場合に、責任者に対するとがめ立て、それに対する責任者の一応の弁解、ないしは引責というだけでその問題が完全に落着したような気がして、いちばんたいせつな物的調査による後難の軽減という眼目が忘れられるのが通例のようである。これではまる・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・ついでにもう一歩を進めるならば、電車の切符について起り得る錯誤のあらゆる場合を調査しておくのもいいかと思う。不正な動機から起るものの外に、どれだけ色々の場合があるかを研究し列挙して車掌達の参考に教えておくのも悪くない。事柄が人の「顔」にかか・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 近ごろ、夕飯の食卓で子供らと昔話をしていたとき、かつて自分がN先生とI君と三人で大島三原山の調査のために火口原にテント生活をしたときの話が出たが、それが明治何年ごろの事だったかつい忘れてしまってちょっと思い出せなかった。ところが、その・・・ 寺田寅彦 「詩と官能」
・・・それを僅々数時間あるいはむしろ数分間の調査の結果から、さもさももっともらしく一部始終の顛末を記述し関係人物の心理にまでも立ち入って描写しなければならないという、実に恐ろしく無理な要求である。その無理な不可能な要求をどうでも満たそうとするとこ・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・冬木町の名も一時廃せられようとしたが、居住者のこれを惜しんだ事と、考証家島田筑波氏が旧記を調査した小冊子を公刊した事とによって、纔に改称の禍 冬木弁天の前を通り過ぎて、広漠たる福砂通を歩いて行くと、やがて真直に仙台堀に沿うて、大横川の岸・・・ 永井荷風 「深川の散歩」
・・・たとえば、各地方に令して就学適齢の人員を調査し、就学者の多寡をかぞえ、人口と就学者との割合を比例し、または諸学校の地位・履歴、その資本の出処・保存の方法を具申せしめ、時としては吏人を地方に派出して諸件を監督せしむる等、すべて学校の管理に関す・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・一千九百廿五年十月廿五日今日は土性調査の実習だった。僕は第二班の班長で図板をもった。あとは五人でハムマアだの検土杖だの試験紙だの塩化加里の瓶だの持って学校を出るときの愉快さは何とも云われなかった。谷先生もほんとうに愉・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・(どっちからお出(郡から土性調査をたのまれて盛岡(田畑の地味のお調 老人は眉を寄せてしばらく群青いろに染まった夕ぞらを見た。それからじつに不思議な表情をして笑った。(青金で誰か申し上げたのはうちのことですが、何分汚な・・・ 宮沢賢治 「泉ある家」
・・・地質調査をするときはこんなどこから来たかわからないあいまいな岩石に鉄槌を加えてはいけないと教えようかな。すぐ眼の前を及川が手拭を首に巻いて黄色の服で急いでいるし、云おうかな。けれどもこれは必要がない。却って混雑するだけだ。とにかくひどく坂に・・・ 宮沢賢治 「台川」
出典:青空文庫