・・・彼のような穏当な学究さえも彼の理性が超国家主義と絶対主義に服従しないで立っているという理由で起訴され裁判された。河合栄治郎が学者としての良心の最低線を守ろうとした抵抗の精神は、人事院規則に対する南原の線を守る人たちの抵抗でもある。 日本・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・十二月二十四日開催の第七十三議会に先立つこと九日の十五日に日本無産党・全評を中心として全国数百人の治維法違反容疑者の検挙が行われ、議会に席を有する加藤勘十、黒田寿男氏等は何日も経ず起訴された。被検挙者中には、大森義太郎、向坂逸郎、猪俣津南雄・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・この事件が起訴されるまでの全過程を通じて、検察団はどのように行為したか。そして、これからどのように行動して法律をつかうかという点が十分監視されなければならないということである。どういう結果であれ、人々は真実の事実を知りたいと思っているのだ。・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・の翻訳者並に出版者が起訴されることに決定したことについて、抗議します。二、抗議の理由は、すでにこの事件のはじめから多くの方々によって公然と書かれまた語られているとおり、「チャタレー夫人の恋人」は本質において文学作品であって、ワイセツを目・・・ 宮本百合子 「「チャタレー夫人の恋人」の起訴につよく抗議する」
・・・の要求は、ほとんどすべての文学者の心底にある。しかし、平和愛好の公然たる意志表示、何かの行動にあたって、政治的になることは、意識してさけられつづけている。「チャタレー夫人の恋人」の起訴問題は、一面ではそのようなこんにちの日本の文学者の社会行・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・一年の警察生活で宮本は白紙のまま起訴された。一週間に一遍ずつ市ヶ谷に面会にゆくことが日課になった。宮本がともかく警察で殺されないで市ヶ谷に行ったということは私を大変安心させた。小説の書ける気持になった。小説「乳房」を中央公論に発表した。この・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・を書いたこの作者は「思想関係の事件で起訴されたり投獄されたりの間の、自分の意志でどうともならなかった心の動きの秘密を知りたいという慾求」から「自分の血統に傾ける心」を持って「自分の一族」の経歴を溯っている。作者は、自身の蹉跌や敗北の責任を「・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・この作品によってゴーリキイが起訴された。そのことをレーニンに話したら「始めは眉をひそめたが、すぐに頭をふって、目を閉じて、いかにも特別意味あり気な笑い声をあげた。その笑い声が隣の部屋にいた労働者達をよびよせた」とゴーリキイは後年書いている。・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・一九〇一年の四月に、ゴーリキイは労働者のために檄文を書いた廉で罪に問われ、起訴された。この時ゴーリキイはニジェゴロドスカヤ県のアルザマスという町へやられ、室内監禁にあった。「小市民」「どん底」の二つの戯曲がこの一種の流刑生活の間に書かれ・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫