・・・――既に病気が本復した以上、修理は近日中に病緩の御礼として、登城しなければならない筈である。所が、この逆上では、登城の際、附合の諸大名、座席同列の旗本仲間へ、どんな無礼を働くか知れたものではない。万一それから刃傷沙汰にでもなった日には、板倉・・・ 芥川竜之介 「忠義」
・・・ソンナものを写すのは馬鹿馬鹿しい、近日丸善から出版されるというと、そうか、イイ事を聞いた、無駄骨折をせずとも済んだといった。 その時、そんなものを写してドウすると訊くと、「何かの時には役に立つさ、」といった。「何でも書物は一生の中に一度・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・やむをえず負える靴をとりおろして穿ち歩むに、一ツ家のわらじさげたるを見当り、うれしやと立寄り一ツ求めて十銭札を与うるに取らず、通用は近日に廃せらるる者ゆえ厭い嫌いて、この村にては通用ならぬよしの断りも無理ならねど、事情の困難を話してたのむに・・・ 幸田露伴 「突貫紀行」
・・・後に「チャップリン黄金狂時代、近日上映」という広告が貼ってあった。龍介はフト『巴里の女性』という活動写真を思いだした。それにはチャップリンは出ていなかったが、彼のもので、彼が監督をしていた。彼がそれを見たのは恵子とのことが不快に終ったすぐあ・・・ 小林多喜二 「雪の夜」
・・・っつやっつのあげくしからば今一夕と呑むが願いの同伴の男は七つのものを八つまでは灘へうちこむ五斗兵衛が末胤酔えば三郎づれが鉄砲の音ぐらいにはびくりともせぬ強者そのお相伴の御免蒙りたいは万々なれどどうぞ御近日とありふれたる送り詞を、契約に片務あ・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・』――あとの二つは、講談社の本の広告です。近日、短篇集お出しの由、この広告文を盗みなさい。お読み下さい。ね。うまいもんでしょう?私に油断してはいけません。私は貴方の右足の小指の、黒い片端爪さえ知っているのですよ。この五葉の切りぬきを、貴方は・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・かかる弊害は、近日我が邦の政談上においてもおおいに流行するが如し。左にその次第を述べん。 嘉永年中、開国の以来、我が日本はあたかも国を創造せしものなれば、もとより政府をも創造せざるべからず。ゆえに旧政府を廃して新政府をつくりたり。自然の・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・ 然るに近日、世間の風潮をみるに、政治家なる者が教育の学校を自家の便に利用するか、または政治の気風が自然に教場に浸入したるものか、その教員生徒にして政の主義をかれこれと評論して、おのずから好悪するところのものあるが如し。政治家の不注意と・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
過般、榎本文部大臣が地方官に向って徳育の事を語り、大臣は儒教主義をとる者にして、いずれ近日儒教の要を取捨して、学生のために一書を編纂せしむべしとのことなり。然るに、徳教書編纂の事は、先年も文部省に発起して、すでに故森大臣の・・・ 福沢諭吉 「読倫理教科書」
・・・輝チャンに送る毛糸が殆んど揃って、近日中に送れます。私が火鉢で湯のししてなかなかいい毛糸です。十一月二十日 十一月二十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より〕 十一月二十二日 今日の日曜は珍らしく穏やかな秋の小春日和で・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫