・・・若い女性、従来若いと云えば、直ちに幼稚な頭脳、浅い判断と云う追従語によって形容された青年は、少くとも、生命に満ちた心其もので現代の不安を感じて居ります。魂を強め、生活に力を与える暗示を得る事は望んで居ります。一般に、彼等自ら、何とも知らぬ、・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 小さい魂や、浅薄な動機からの追従も、物によってはそのわなにかからずにすむ。若し私が、貴方の御両親は、真に素晴らしい御金持で、と云われたと仮定して見る。此那讚辞に対して、私は元より無関心である。 私は、平静な微笑をもって、其に報い得・・・ 宮本百合子 「樹蔭雑記」
・・・アカデミックな要素が加わったことで、一部の人々の極端な事大的追従が些か制せられるとあれば無意味ではないようなものの、長谷川如是閑氏が『セルパン』八月号の小論でいっている「保護」と「自由」との現代日本における現実的性格は、この団体に参加した如・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・びっくりして王様が剣へ手をかけながら起き返っていると、裾の方に、だんだら縞の着物を着た一寸法師が揉手をして、お追従笑いをしながら立っている。『お前は、一体何者だ、夜中に何の用がある』 王様は少し安心して訊ねた。『ハイ、私の無上に・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・ 特別な点に気がついてねえ、 奉公人根性をどうしたって無くさせる事は出来ませんよ、 長く奉公をすればするほど気持の悪くなる御追従と謙遜と憎らしい図々しさばかり大抵はふえるもんです。 平気で自分の躰をさいなんで笑う様になります・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・と屡々繰返される両親から、物質的補助を心易く受け得る申訳として、家族の一員と成って其姓を犯す――此を彼にさせてよろしいものだろうか、 此点の決定は、自分を一家のペットとするか、或は又、主義、真理の追従者とするかに別れる。 自分は彼等・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・その時、貴女というものは、他の追従を許さない絶対の貴女であって、同時に、日常の貴女の或るものからは、完全に解脱した人格のしんの光耀に接するのでございます。 あらゆるよき芸術の驚くべき独立性と、普遍性との調和が、そこから生ずるのではござい・・・ 宮本百合子 「野上彌生子様へ」
・・・日記の中で、そういう女の人達に混って食うに食えないような自分、着物さえも借着である、そして、お追従を云いながらあの人たちの中に入っていなければならないのか、馬鹿らしいことだ、口惜しいことだと憤慨しています。自分の働いて生きて行く女としての立・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・ハリコフ会議が決定したとさえいえば、それに追従して農民文学の問題をとりあげる。ソヴェト同盟やドイツで創作の唯物弁証法的方法といえば、又それに太鼓をたたく。定見のないオッチョコチョイ奴、と。 然し、この悪口は彼らの、非プロレタリア的な世界・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・此のより深き認識への追従感覚を所有した作品をまた自分は尊敬する。例えば最も平凡な例をもってすれば、ストリンドベルヒの「インフェルノ」「ブリューブック」及び芭蕉の諸作や志賀直哉氏の一二の作に於けるが如く、またニイチェの「ツァラツストラ」に於け・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫