・・・民主日本の発展の途上に、一種の反対勢力として権謀的に培養されている軍国主義の暗いうごめきを、婦人の心の正直さは明瞭に拒んで行かなければならない。〔一九四八年一月〕 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・モスクワでトラムは各クラブをまわり、彼等のリアリスティックな芸術表現で、ソヴェト勤労者が彼等の新文化建設の途上多くもっている今日の問題を批判している。 ――何ていう脚本やるの? 日本女の問に二人のピオニェール少女はきっぱり返事した。・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
法制会が、婦人参政権の問題を否決したのは、さまで意外なことではありません。何にしろ日本は、やっと普通選挙が実現されるかされないかと云う、社会進化の途上にあります。 英国でさえ、殆ど百年に近い時日を費したこの問題が、そう・・・ 宮本百合子 「参政取のけは当然」
・・・これらのことは、民主革命へのこんにちの途上で、わかりにくい内容のことだろうか。 もとより私は自分の作品が完成したものだとは思っていない。作家としての自身にもとめているところは決してすくなくない。作家と作品への個々のこのみはいろいろだろう・・・ 宮本百合子 「事実にたって」
・・・ 古人がすでにその風流の途上で看破している自然と人間の主観との以上のような交流は、特に日本古典文学の領域の中でおびただしい表現をもっているのである。然し、人間の主観的な感情の鏡によって、自然の姿が悲喜さまざまに観られ感受されると同時に、・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・半封建的なブルジョア文学との闘争とプロレタリア文学運動発展の途上において、世界の現実を見る、より社会的政治的な発展的な目を作家に与えた点、静的な自然主義的リアリズムから社会発展の方向においてのリアリズムを理解させた点、無視することはできない・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・『アウシュコルン、』かれは言った、『今朝、ブーズヴィルの途上でイモーヴィルのウールフレークの遺した手帳をお前が拾ったの見たものがある。』 アウシュコルンはなぜそんな不審が自分の上にかかったものか少しもわからないので、もうはや懼れて、・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
・・・あるいは我らが散歩の途上常に見慣れた景色。あるいは我々人間の持っているこの肉体。――すべて我々に最も近い存在物が、彼らに対して、「そこに在ることの不思議さ」を、「その測り知られぬ美しさ」を、描かれることを要求する。従って彼らは、いかなる描き・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・予は散歩の途上、諸君の礼拝する所を見て歩いた時に、「知らざる神に」と刻りつけた一つの祭壇を見いだして非常に驚いたことがあった。諸君の中には確かにある未知の神への憧憬が動いているのである。予の神はこの、諸君が知らずして礼拝するところの神である・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・真に自分の個性の建立に努むる途上においてならば、いかなる事が起ろうとも自分は悔いない。 自分は自分の力に許されている以上のことを望んでいる。しかし自分は自分以外のものになろうとしているのではない。また自分を改良し訂正しようとしているので・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
出典:青空文庫