・・・ただこの場合において一、二の注意を述べるなら、職能に関する読書はその部門の全般にわたる鳥瞰が欠くべからざるものであるが、そのあいだにもおのずと自分の特に関心し、選ぶ種目への集注的傾向が必要である。何事かを好み、傾くということがそのことへの愛・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・各産業部門に於ける独占は、利潤を多くする。小資本は大資本に併合される。それから銀行と産業とが結びついて、金融資本が発生し、金融寡頭政治ができてくる。 資本家の間に於ける独占は、始めは国内の市場をそれぞれに分割する。が、国内の市場は、資本・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・それでチューリヒのポリテキニクムの師範科のような部門へ入学して十七歳から二十一歳まで勉強した。卒業後彼をどこかの大学の助手にでも世話しようとする者もあったが、国籍や人種の問題が邪魔になって思わしい口が得られなかった。しかし家庭の経済は楽でな・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・純粋に解析的と考えられる数学の部門においてすら、実際の発展は偉大な数学者の直感に基づく事が多いと言われている。この直感は芸術家のいわゆるインスピレーションと類似のものであって、これに関する科学者の逸話なども少なくない。長い間考えていてどうし・・・ 寺田寅彦 「科学者と芸術家」
・・・のみならずおのおの独立の名称を有っている科学の分派、例えば物理とか化学とかいうものの中にまた色々の部門がおのおの非常な発達をしている。たとえ日進月歩の新知識を統括する方則や原理の数はそれほど増さないとしても、これによって概括せらるべき事実の・・・ 寺田寅彦 「科学上における権威の価値と弊害」
・・・ 叙事と抒情とによって文学の部門を分けるのは、そういう形式的な立場からは妥当で便利な分類法であるが、ここで代表されているような特殊な立場から見れば、こういう区別はたいした意味を持たなくなる。 最も抒情的なものと考えられる詩歌の類で、・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・それだけならば、まだしもであるが、困ったことには、各自が専門とする部門が斯学全体の中の一小部分であることをいつか忘れてしまって、自分の立場から見ただけのパースペクティヴによって、自分の専門が学全体を掩蔽するその見掛け上の主観的視像を客観的実・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・それで一見いわゆるはなはだしく末梢的な知識の煩瑣な解説でも、その書き方とまたそれを読む人の読み方によっては、その末梢的問題を包含する科学の大部門の概観が読者の眼界の地平線上におぼろげにでもわき上がることは可能でありまたしばしば実現する事実で・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・そしてまた現在の進歩した時代から見た時に幼稚に不完全に見えないものがいかなる初期の科学の部門に見いだされうるであろうか。 余談はしばらくおいて、AB、AC、AD……の関係、なお念のために比較の主客を置換してBA、CA、DA……の関係の濃・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・ここはちょっと一つの独立な区画になっている、戦争前には哲学、美術、科学とそれぞれの部門にわたって系統的に分類して陳列されていたのが、このごろではもう目ぼしいような物は大概売り切れてしまって、いろいろな部門のものが雑然と入り乱れている。ドイツ・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
出典:青空文庫