・・・ただし半年一歩の出金は、その家に子ある者も子なき者も一様に出ださしむる法なり。金銀の出納は毎区の年寄にてこれを司り、その総括をなす者は総年寄にて、一切官員のかかわるところにあらず。 前条の如く、毎半年各戸に一歩の金を出ださしむるは官の命・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・ 目に余る贅沢 金銀の使用がとめられている時代なのにデパートの特別売場の飾窓には、金糸や銀糸をぎっしり織込んだ反物が出ていて、その最新流行品は高価だが、或る種の女のひとはその金めだろうけれどいかつい新品を身につ・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・「手前共は、羊皮や長靴などの商いではございません。金銀にまさる神様のお恵みを御用立てるのでございます。これには、もう値段はございません」「畜生! うまく百姓をたらし込んでいやがる。覚えとけ! 覚えとけ!」 店へ来る百姓は皆貧乏そ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・多分金銀に望を繋けたものであろう。家督相続の事を宜しく頼む。敵を討ってくれるように、伜に言って貰いたいと云うのである。その間三右衛門は「残念だ、残念だ」と度々繰り返して云った。 現場に落ちていた刀は、二三日前作事の方に勤めていた五瀬某が・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
出典:青空文庫