・・・とにかくまだまだ歌は長生すると思うのか。A 長生はする。昔から人生五十というが、それでも八十位まで生きる人は沢山ある。それと同じ程度の長生はする。しかし死ぬ。B 何日になったら八十になるだろう。A 日本の国語が統一される時さ。・・・ 石川啄木 「一利己主義者と友人との対話」
・・・ 淡島氏の祖の服部喜兵衛は今の寒月から四代前で、本とは上総の長生郡の三ヶ谷の農家の子であった。次男に生れて新家を立てたが、若い中に妻に死なれたので幼ない児供を残して国を飛出した。性来頗る器用人で、影画の紙人形を切るのを売物として、鋏一挺・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・○ゆうべ、うらない看てもらった。長生する由。子供がたくさん出来る由。○飼いごろし。○モオツアルト。Mozart.○人のためになって死にたい。○コーヒー八杯呑んでみる。なんともなし。○文化の敵、ラジオ。拡声器。○自・・・ 太宰治 「古典風」
・・・「ダンテ、――ボオドレエル、――私。その線がふとい鋼鉄の直線のように思われた。その他は誰もない。」「死して、なおすすむ。」「長生をするために生きて居る。」「蹉跌の美。」「Fact だけを言う。私が夜に戸外を歩きまわると、からだにわるいのが痛・・・ 太宰治 「めくら草紙」
・・・のないものは決して長生する事は出来ない。 聖ダンテの「神曲」は、何故今日まで不朽に生命を受けて居るか。 永遠に変らざる「真」がその一言の中にも輝いて居るからでは無いか。 ホーマーもミルトンも、只「真」の一字がある故に尊いではない・・・ 宮本百合子 「大いなるもの」
・・・ 敷島の烟を吹いていた犬塚が、「そうさ、死にたがっているそうだから、監獄で旨い物を食わせて、長生をさせて遣るが好かろう」と云って笑った。そして木村の方へ向いて、「これまで死刑になった奴は、献身者だというので、ひどく崇められているというじ・・・ 森鴎外 「食堂」
出典:青空文庫