・・・しかしこの雑音は送音管部のみならず盤や針や振動膜やすべての部分の研究改良によって除去し得ないほどの困難とは思われない。早晩そういう改良が外国のどこかで行なわれるだろうと予期される。 もう一つの蓄音機の欠点は、レコードの長さに制限があって・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・そうして、普通人間の手に触れる物体は自然に油脂類のそういう皮膜でおおわれていて、それを完全に除去するのはなかなか容易でない事が知られている。そこで洗面鉢やコップなどにはほとんど当然にそういう皮膜があるものと仮定しなければならない。そうしてそ・・・ 寺田寅彦 「日常身辺の物理的諸問題」
・・・名前はやはり新聞でもそれはさしつかえないが、ともかくも現在の日刊新聞の短所と悪弊をなるべく除去して、しかもここに仮定した必要の知識を必要な程度まで供給する刊行物である。 私はこの二三年ロンドンタイムスの週刊を取っている。これがロンドンで・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・実際重力加速度gを定めるにはこのような直接の方法によらず、却って間接に振子の週期と長さから定め、空気の抵抗の影響は必要に応じて理論から計算した補正で除去する事が出来るのである。天体の影響などは云うに足らぬし、普通の場合ならば電気や磁気の影響・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・もしどこまでも非人間的な態度で行けば物理学の書籍からこのような言葉を除去しなければならぬはずであるが、実際は平気でこれを使用している、この一事でも非人間主義の物理学が人間の便宜のために膝を屈している事はわかるだろう。 ある人は著者に物理・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
・・・が不信心な自分の胸に流れ込むと同じように、これらの書物の中から流れ出る一種の空気のようなものは知らぬ間に自分の頭にしみ込んで、ちょうど実際に読書する事によって得られる感じの中から具体的なすべてのものを除去したときに残るべきある物を感じさせる・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・空気の抵抗や、風の横圧や、周囲の物体より起る不定な影響を除去した時に始めて厳密に適用さるべきものである。そしてこれらの第二次的影響の微少なる限り近似的に適用するものである。それでこの種の方則は具体的事象の中から抽象によって取り出された「真」・・・ 寺田寅彦 「漫画と科学」
・・・しかし、こういう機械的の欠点はだんだんに除去されるであろうから、いつかはここで想像されたような音響のモンタージュによる立派な詩や絵のようなものが創作されて一般の鑑賞を受ける日が来るであろうと思われる。 こういうものができるようになった場・・・ 寺田寅彦 「ラジオ・モンタージュ」
・・・ 彼が雷電や地震噴火を詳説した目的は、畢竟これら現象の物質的解説によって、これらが神の所業でない事を明らかにし、同時にこれらに対する恐怖を除去するにあるらしい。これはまたそのままに現代の科学教育なるものの一つの目的であろう。しかし不幸に・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・知る者そのものは既に除去せられているのである。しかし知るものなくして知るということは考えられない。此に深い矛盾がある、問題がある。しかも一度対象認識の立場に立った以上、何処までも知るというものは視野に入って来ない。実在界とはいわゆる認識形式・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
出典:青空文庫