・・・も一つはたとい多少の無理を含んでいても、進化してきた人間の理想として、男女の結合の精神的、霊的指標として打ち立て、築き守って、行くべきものであるということである。 生命の法則についての英知があって、かつ現代の新生活の現実と機微とを知って・・・ 倉田百三 「愛の問題(夫婦愛)」
・・・ 青年にとって性の目ざめは肉体的な、そして霊的な出来ごとである。この湧き上ってくる衝動と、興奮と、美しく誘うが如きものは何であろう。人生には今や霞がかかり、その奥にあるらしい美と善との世界を、さらに魅力的にしたようである。若き春! ・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・ 聖書を読むまでと、読後とでは、人間の霊的道徳性はたしかに水準を異にする。プラトンとダンテとを読むと読まないとではその人の理念の世界の登攀の標高がきっと非常に相違するであろう。 高さと美とは一目見たことが致命的である。より高く、美し・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・それは動物的、本能的な愛からもっと高まって、精神的、霊的な段階にまで達した愛である。実際厳しいところのある母を持った子は幸いである。厳しい母親というものは少ない。その感化は一生つづく、子どものときから一生涯つづく性格に力強い方向を与える。女・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・本当の芸術愛好家なら、仏教の信仰をそのものとして奉持しなくても、美から来る霊的欽仰を仏像とその作者とに対して抱かずにはおられない。彼等は感歎し、讚美する。端厳微妙な顔面の表情や、腕、脚の霊活な線について。よき芸術にふれた歓喜を、彼等は各々多・・・ 宮本百合子 「宝に食われる」
・・・p.260○われわれは彼以前にこれほど密集的な感情の多様を知らず われわれの霊的混淆についてこれほど多くを知らなかったのである。p.261◎われわれの認識の豊かさに徴して明かな通り、われわれが過去に比して感情の一層分化した最初の人間・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・ような霊的交流をもって生活したが、やがて男はそのみこのような霊力の女をすてて、別の女と結婚し、死ぬ。 龍江は、だが、男の結婚したことは知らず、ある夜、ふろの中で突然はげしい香におそわれ、真裸でこのような強い香をかぐのは、たいへん恥しいこ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・として何らの霊的自覚なく、命ぜらるるがままに右に向かい左に動く。かくて忠も孝も無意味なる身体の活動となる。徳の根底に横たわるべき源泉なくして善といい悪と呼ぶがゆえに反哺の孝と三枝の礼は人生の第一義だと言われる。烏と鳩とに比べらるるのは吾人の・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫