・・・ただ、学芸にたずさわる団体は時々何かしらかなり根本的な革新を企てて風通しをよくし、黴の生えないようにする必要があるという至極平凡なことを、やや強く表現しようとしただけのことである。実際、少々拙ない改新でも完全なる習俗に優ることがしばしばある・・・ 寺田寅彦 「二科展院展急行瞥見記」
・・・ 短歌や俳句が使い古したものであるからというだけの単純な理由からその詩形の破棄を企て、内容の根本的革新を夢みるのもあえてとがむべき事ではないとしても、その企図に着手する前に私がここでいわゆる全機的日本の解剖学と生理学を充分に追究し認識し・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・れていた着物を一枚剥ねぬぎ、二枚剥ねぬぎ、しだいに裸になって行く明治初年の日本の意気は実に凄まじいもので、五ヶ条の誓文が天から下る、藩主が封土を投げ出す、武士が両刀を投出す、えたが平民になる、自由平等革新の空気は磅ほうはくとして、その空気に・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・日本の社会生産と経済とは、封建のままの土地制度、耕農手段を基礎としていて、一握りの進歩的大名と、革新的下級武士と、外部からのヨーロッパ、アメリカとの力が結合して倒幕運動がおこされ、日本の近代企業、銀行、会社の創立は、すべて、政府の上からの保・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・そして、大衆的懇談会で革新有志二十人をつくる。国鉄。 一般に官業だから政府のつぶれぬうちは従業員の生活は保証されていると考えている。十五ヵ年間以上つとめると一時金なら二千円以上 年金なら一時千円で以下毎年金が下りるので、お・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
・・・という歌壇革新の歌論を日本新聞に発表したのは明治三十一年であった。当時十九歳ばかりであった長塚節はこの論文にいよいよ動かされた。そして、三十年には子規の門に入り、主として和歌、俳句、写生文を学び、子規が没し『アララギ』が出るようになってから・・・ 宮本百合子 「「土」と当時の写実文学」
・・・ 裡に絶え間ない不安、焦燥、生活の革新を抱いている者は、或る時は終に爆発する。それが、その時の周囲の状況、社会輿論の暗示によって、種々異った形式を採るのは争われない事実なのである。 故に、我々は、その重大な一点に、絶えず聰明な、透徹・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・商工業の急激な進歩、産業界全面の革新は一方に大英国の富をつみ上げてゆくと一緒に、その大都会の他の一方に猛烈な勢いで貧民窟と救民院の無力な活動と犯罪率の上昇とをうみ出した歴史的な一時代であった。心あるイギリス人は、この富と貧との新しい社会悲惨・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・明治の初期における社会の革新的な動き方は、日本の歴史に未曾有のものであった。当時の進歩的な人々が、腐れ果てた封建の殼から脱け出して、新しい日本人として発展しようとした欲望には、真実が籠っていた。例えば今日常に保守的或は反動的な役割を持ってい・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・多くの困難があり、苦痛があるにしろ、私共は、とかく姑息になり勝ちな人間の意志を超えた力で、社会革新の地盤を与えられたことを、意味深い事実として知っているのだ。 女性としての生活の上からも、本当に生活に必須なことと、そうでないこととの区別・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
出典:青空文庫