・・・ 鴎外が博物館総長の椅子に坐るや、世間には新館長が積弊を打破して大改革をするという風説があった。丁度その頃、或る処で鴎外に会った時、それとなく噂の真否を尋ねると、なかなかソンナわけには行かないよ、傍観者は直ぐ何でも改革出来るように思・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・あんまりいけなけあ仕方ないから館長様へ申し上げてアイスランドへ送っちまうよ。 ええおい。さあ坊ちゃん。きっとこいつは談します。早く涙をおふきなさい。まるで顔中ぐじゃぐじゃだ。そらええああすっかりさっぱりした。 お話がすんだら早く学校・・・ 宮沢賢治 「黄いろのトマト」
・・・K氏からの紹介で、長崎図書館長、永山時英氏を訪ねる予定なのであった。私は独り俥で出掛けた。 図書館は、諏訪公園の中に在る。グラント将軍が来朝した時建てた交親館を改造した小ぢんまりした建物だ。館長室に故渡辺与平の油絵と、同じ人の墨絵の竹の・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・べての学者、芸術家がマドリッド政府の側に在り、有名なセロの名手、私たちに馴染ふかいパブロ・カザルスが全財産を寄附したり、画家ピカソがスペイン美術をファシストの砲火から守るためにマドリッドのプラド美術館館長に任命されたりしているということを、・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫