・・・――「当修善寺から、口野浜、多比の浦、江の浦、獅子浜、馬込崎と、駿河湾を千本の松原へ向って、富士御遊覧で、それが自動車と来た日には、どんな、大金持ちだって、……何、あなた、それまでの贅沢でございますよ。」と番頭の膝を敲いたのには、少分の茶代・・・ 泉鏡花 「半島一奇抄」
・・・停車場前の百貨店の食堂の窓から駿河湾の眺望と涼風を享楽しながら食事をしている市民達の顔にも非常時らしい緊張は見られなかった。屋上から見渡すと、なるほど所々に棟瓦の揺り落されたのが指摘された。 停車場近くの神社で花崗石の石の鳥居が両方の柱・・・ 寺田寅彦 「静岡地震被害見学記」
せんだって、駿河湾北端に近い漁場における鰺の漁獲高と伊豆付近の地震の頻度との間にある関係があるらしいということについて簡単な調査の結果を発表したことがあった。このように純粋に物質的な現象、すなわち地震のような現象と、生物的・・・ 寺田寅彦 「物質群として見た動物群」
出典:青空文庫