・・・もう海軍力はどこの海面のも全滅している噂の拡がっているときだった。レイテ戦は総敗北、海軍の大本山、戦艦大和も撃沈された風説が流れていた。 珍らしいパン附の食事を終ってから、梶と栖方は、中庭の広い芝生へ降りて東郷神社と小額のある祠の前の芝・・・ 横光利一 「微笑」
・・・ 暫くしてから海面の薄明りの中で己はエルリングの頭が浮び出てまた沈んだのを見た。海水は鈍い銀色の光を放っている。 己は帰って寝たが、夜どおしエルリングが事を思っていた。その犯罪、その生涯の事を思ったのである。 丁度浮木が波に弄ば・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
出典:青空文庫