・・・ 戦争で日本を破滅させた狂暴な権力は、こうして、一様に、純文学も大衆文学も潰してしまった。すべての人民が焼野の上に新しい民主日本をうち立てなければならなくなった。すべての人民が自分たちが主人となっての新生活を建設してゆくにふさわしい、自・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・尾崎秀実氏とその国際的な同志たちとは、日本の軍事権力が最後ののたうちで最も悪逆になり狂暴となったその時期の犠牲であったのである。 非道な力は終焉に瀕している、それだからこそ国際的な民主主義者の生命を奪うようなことさえせざるを得なくなって・・・ 宮本百合子 「人民のために捧げられた生涯」
このごろの強盗殺人の特色は、件数が多いばかりでなく、事件の性質が戦争以前とまったくちがっていると思う。それは方法が非常に兇暴になっていることである。人を殺してまで物をとるということは、私達の常識では物とりの極限であった。シ・・・ 宮本百合子 「戦争でこわされた人間性」
・・・ 栗林弁護人も竹内被告の起訴状について共謀、謀議などの言葉の意味についてたずねる。 裁判長「今わかりませんか。共謀の日時、場所は。」 勝田検事「七月十日から十五日ごろまで。三鷹電車区構内の整備第二詰所としようとしている古電車や、・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・奴等の小屋が幸地続きだったから、幾分都合はよかったものの、蒔いた呪咀の種と、狂暴の酵母の多さ! 俺もよく破産しなかったものだ。ヴィンダー 滅多なことには驚かない俺も、あの時許りは目を瞠った。人間共に未来を見せず、奴等の悦ぶ思弁にこじつけ・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・恐ろしく狂暴な自然に抗しながら、健気に良人を扶けて、家を守り、殆ど生命を賭して子を育てる女性に対して、如何なる男性が侮蔑の声を発せられましょう。 一朝、野蛮人の襲撃に会えば、彼等は、只、彼等の団結によってのみその敵を防がなければならない・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・p.259○彼等が慾求するのは 慾望の充足を希うがためのみならず、それと同時にまた慾望を拒否された堕地獄の状態をも希うがためである。○対立は対立を生むのである。p.259○狂暴な循環の中に彼らの意欲の旋風は渦巻いている。p.26・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・第二次大戦はファシズムの非人間性と狂暴な破壊性についておそろしい教訓を与えました。近代戦争の無制限な戦線拡大は、戦争の非人道性をあらゆる人におもい知らせました。戦争を嫌悪する心、平和な状態で平和な人民生活を安定させたいという願いは、第二次大・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・殊に、社会生活の実力に乏しい女性が、多くの場合その結果を自己の力では到底回収し得ない、或る瞬間、或る期間の必死な狂暴性で事を為すことは、悲惨という以上に感ぜられる。〔一九二一年十二月〕・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・彼女が、何とも云えず狂暴に、何とも云えず苦しさに混乱して居る様子が、自分には、云いようなく辛かった。和らぎたい心持は、溢れる程胸に満ちて居る。而も、私は仕事のことを思うと、もう親にも良人にも代えられない献身を覚え、その、わが命を守る為に、涙・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
出典:青空文庫