・・・娘は終にその俳優の胤を宿して、女の子を産んだそうだが、何分にも、甚だしい難産であったので、三日目にはその生れた子も死に、娘もその後産後の日立が悪るかったので、これも日ならずして後から同じく死んでしまったとの事だ。こんな事のあったとは、彼は夢・・・ 小山内薫 「因果」
・・・曲水山房主人孫氏は大富豪で、そして風雅人鑑賞家として知られた孫七峯とつづき合で、七峯は当時の名士であった楊文襄、文太史、祝京兆、唐解元、李西涯等と朋友で、七峯のいたところの南山で、正徳十五年七峯が蘭亭の古のように修禊の会をした時は、唐六如が・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・ 子供と一緒に自分の命を捨てる、難産のような苦しみであった。 ――どこだ、ここは、―― 彼は鈍く眼を瞠った。 どこだか、それを知りたくなった。 ――どこで、俺は死にかけているんだ!―― 彼は、最後の精力を眼に集めた。・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・こちらへとって置きましょう。南山堂も郁文堂もモクロクは出していません。この頃こういうものは出せないらしい風ね、紙がなくて。『仏語より英語へ』は題が逆でしたがあったから『老婆』と一緒にお送りしました。面白そうな本ね。英語を元にして、ロシヤなら・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・「でも……講からはずれた××さんは、赤ん坊の頭だけ出て、あとえらい難産したアだとよ」「そら、お前四日も食わなかった揚句だもの! 体に力がないところさ、どうして安々生れべ! 子安講さ入っててもわれわれが食えるようにはならねえよ」「・・・ 宮本百合子 「飛行機の下の村」
出典:青空文庫