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・・・ついに家中の十人の内九人までが軽薄なへつらい者になり、互いに利害相結んで、仲間ぼめと正直者の排除に努める。しかも大将は、うぬぼれのゆえに、この事態に気づかない。百人の中に四、五人の賢人があっても目にはつかない。いざという時には、この四、五人・・・
和辻哲郎
「埋もれた日本」
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・・・しかし我々はこれらの一切を排除してもなお人を思い浮かべ得るが、ただ顔だけは取りのけることができない。後ろ姿で人を思う時にも、顔は向こうを向いているのである。 このことを端的に示しているのは肖像彫刻、肖像画の類である。芸術家は「人」を表現・・・
和辻哲郎
「面とペルソナ」