・・・の道に立ち帰り、他の道に足を踏み入れてなお初めの道を顧み、心の中に悶え苦しむ人はもとよりのこと、一つの道をのみ追うて走る人でも、思い設けざるこの時かの時、眉目の涼しい、額の青白い、夜のごとき喪服を着たデンマークの公子と面を会わせて、空恐ろし・・・ 有島武郎 「二つの道」
・・・ 今日は少しこの世のことについてお話しいたそうと欲います。 デンマークは欧州北部の一小邦であります。その面積は朝鮮と台湾とを除いた日本帝国の十分の一でありまして、わが北海道の半分に当り、九州の一島に当ら・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・電球をちょっとのあいだ見つめて、それから眼をつぶっても眼蓋の裏にありありと電球が見えるだろう、それが証拠だ、それに就いて、むかしデンマークに、こんな話があった、と兄さんが次のような短いロマンスを私に教えて下さったが、兄さんのお話は、いつもで・・・ 太宰治 「雪の夜の話」
・・・ 伝聞するところによると現代物理学の第一人者であるデンマークのニエルス・ボーアは現代物理学の根本に横たわるある矛盾を論じた際に、この矛盾を解きうるまでにわれわれ人間の頭はまだ進んでいないだろうという意味の事を言ったそうである。こ・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・ 例のごとくデンマークヒルを散歩して帰ると、我輩のために戸を開いたるペンは直ちにしゃべり出した。果せるかな家内のものは皆新宅へ荷物を片付に行って伽藍堂の中に残るは我輩とペンばかりである。彼は立板に水を流すがごとくびび十五分間ばかりノベツ・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・津軽海峡、トラピスト、函館、五稜郭、えぞ富士、白樺、小樽、札幌の大学、麦酒会社、博物館、デンマーク人の農場、苫小牧、白老のアイヌ部落、室蘭、ああ僕は数えただけで胸が踊る。五時間目には菊池先生がうちへ宛てた手紙を渡して、またいろいろ話され・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・一九二七年 一、七五七、〇〇〇、〇〇〇 一九二八年 二、一五八、〇〇〇、〇〇〇 一九二九年 二、六六一、〇〇〇、〇〇〇世界で、どこが一番多くいろんな名称の本を出しているか デンマーク 三・三 ポーランド・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 夢 デンマークだ。氷原の上を、タンクのようなものや何かが通る、停車場のようなところに自分、多勢の白衣の少女と居る。自分、英語で、劬りながら話した。 How old are you?など。少女一寸英語で返事す・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ ハリウッドに開かれるMRAの大会に日本代表として尾崎咢堂の令嬢夫妻や三井一門の一家族が出発するときいて、わたしたちはおどろきを感じなかったろうか。デンマークでMRAはナチ占領下で平和と民族の自由のためにさまざまの活動をした。戦争の苦し・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・三九年十二月に国際連盟はソヴェト同盟を除名し、ナチス軍はノルウェー、デンマーク、オランダ、ベルギーを侵略した。そして独ソ間の不可侵条約をあざ嗤って、ナチスの大軍がウクライナへとなだれこんだころ、わたしは、しばしばかつてよんだフランス女学生の・・・ 宮本百合子 「私の信条」
出典:青空文庫