・・・三 春のラテン語が ver であるが、ポルトガル語の vero は夏である。ペルシアの春は bahr, 蒙古語では h'abor である。ドイツ語の Frhling は frh から来たとすればこれはfとrである。かなで・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・小十郎は夏なら菩提樹の皮でこさえたけらを着てはむばきをはき生蕃の使うような山刀とポルトガル伝来というような大きな重い鉄砲をもってたくましい黄いろな犬をつれてなめとこ山からしどけ沢から三つ又からサッカイの山からマミ穴森から白沢からまるで縦横に・・・ 宮沢賢治 「なめとこ山の熊」
・・・ 偉かった筈のクロムウェルは何か思いに沈んで額を押えて居るし、ポルトガルのヘンリ王子が槍をついて歩きながら海を想う歌を大声で歌って居る。 マルコポロは、自分で書いたらしい本を持ってきまり悪そうにして居るし………… 地球を片手で持・・・ 宮本百合子 「暁光」
・・・その客間で、「昔は杏ジャムやポルトガルの濁酒を売った小商人」今ではブルジョア化粧品屋でユロ男爵の息子にその一人娘を縁づかせている五十男のクルベルが、安芝居のような身ぶり沢山で、而も婿の生計を支えてやらなくてはならぬ愚痴を並べ、借金の話、娘の・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・彼がポルトガルから渡来した近代武器の威力を理解したからであった。そしてその統一に、一つの有利な条件をつけるために、京都において政権を喪い、窮乏していた天皇の一族に経済的援助を与え、旧藤原一族の権謀慾をしずめようとした。 これは秀吉の時代・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・の時のヨーロッパを考えると、レオナルド・ダ・ヴィンチは二十歳前後の青年であったし、エラスムス、マキアヴェリ、ミケランジェロなどはようやくこの乱の間に生まれたのであるし、ルターはまだ生まれていなかった。ポルトガルの航海者ヘンリーはすでに乱の始・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫