・・・創的であって相手の伝統的対策を少なくも一時戸まどいをさせた、そのオリジナリティに対する賛美に似たあるものと、もう一つには、その独創的計画をどこまでも遂行しようという耐久力の強さ、しかも病弱の体躯を寒い上空の風雨にさらし、おまけに渦巻く煤煙の・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・風のない市の上空には鉛色の煙が物すごくたなびいていた。 もしも事情が許すなら、私はこの広い平坦な高台の森影の一つに小さな小家を建てて、一週のうちのある一日をそこに過ごしたいと思ったりした。これまでいろいろのいわゆる勝地に建っている別荘な・・・ 寺田寅彦 「写生紀行」
・・・拠が存外薄弱であるとして、そうして嗅覚説をもう一ぺん考え直してみるという場合に、一番に問題となることは、いかにして地上の腐肉から発散するガスを含んだ空気がはなはだしく希薄にされることなしに百メートルの上空に達しうるかということである。ところ・・・ 寺田寅彦 「とんびと油揚」
・・・銀と赤の飛行服をつけて上空からやって来た、中央からの婦人使節スワーボダに率いられて、チュダコフ一隊はその飛行機に向って、舞台中央に組み立てられたヤグラを一段一段と高くよじのぼってゆく。くっついて社会主義首府へのりこもうとした俗人、反社会主義・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
出典:青空文庫