・・・ 役者の佐々木孝丸さんは、ペルリ上陸記念碑のある横須賀の久里浜に住んでいるが、すこぶる釣り好きで、よく私を誘った。このごろはどちらも忙しくなって、いっしょに釣りをする機会もなくなってしまったが、久里浜にも二、三回、行ったことがある。東京・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
・・・ 万葉集の立派な写本は宮内府図書寮とかにあってお歌所の長である佐佐木信綱博士しか見られないものだったそうだ。マチスやユトリロの名画は、日ごろは特定の個人に秘蔵されていて、盗まれ横領にあった騒ぎではじめてわれわれ人民の耳目にふれて来る。旧・・・ 宮本百合子 「国宝」
・・・ この年は佐佐木信綱博士の万葉集校訂の大事業が完成して注目をひいたが、従来、国文学者は不思議にも日本の国文学として今日の文学作品までがその研究の分野にとり入れられなければならないという、極めて当然な動きから、かたく身を退いて来た。彼等の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・小田切さんは小田切さんでいいたい話題を、佐々木さんは佐々木さんでいいたい点を、そして、岩上順一さんや除村吉太郎氏はまた氏としての話題の運びかたです。今日新しく民主主義社会への展望とともに自身の文化建設の課題として文学をとりあげはじめた人々に・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・河与一、倉田百三等、この一、二年来の新日本主義的提唱とともに既に顕著な傾向性を示すと共に一般からおのずからなる定評を与えられている諸氏以外に国文学その他の分野では一応は誰しも社会的権威として認めている佐佐木信綱、小宮豊隆、柳田国男、岡崎義恵・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・いずれも文学的公人であるから名をあげることをも許されると信じるが、その夫婦は佐佐木茂索氏夫妻である。 何かの折佐佐木茂索氏とふさ夫人とが題材としては小さい一つの題材を二人両様に扱って書いたところ、その扱いかたの腕では、茂索氏が勝ったとか・・・ 宮本百合子 「夫婦が作家である場合」
・・・と痛感する佐々木をこめて一群の日本人が集まって個人的な問題を中心として議論したり、居住の地域を問題にしたり、宿主とケンカしたり、引っ越したり、一人の仲間が引っ越すとその仲間が遠い郊外の引越先まで行って見て、古い党員の下宿主からリンゴを貰って・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・たかにして古事記や万葉集を読むとしたら、結構なことと云わざるを得ないのであるけれども、文化の全面を社会の現実の有様と照らしあわせて眺めると、理解はしかく皮相、単純なところに止まっておられないと思える。佐佐木信綱氏は、ああいう学派の歌人として・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・例えば佐々木一夫氏という農村の生活を書いている若い作家の実際を傍からみても、その困難の複雑さを教えられた。農業そのものの方法から日本では極度に人力が要求されていて、その上現代の社会経済に対抗して生計を立ててゆくためにはあらゆる方法で多角な経・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
・・・ファウストの場合では校正の時私と太田さんとの心附いた限の訂正をした。次に本が出来てから目を通して正誤をすることが出来る。ファウストの場合では佐佐木信綱さんが好意を以て一読して下さることになった。そこで私と佐佐木さんとの心附いた限が正誤表に上・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫