・・・亡くなった本郷の甥とは同い年齢にも当たるし、それに幼い時分の遊び友だちでもあったので、その告別式には次郎が出かけて行くことになった。「若くて死ぬのはいちばんかわいそうだね。」 と、私は言って、新しい仏への菓子折りなぞを取り寄せた。私・・・ 島崎藤村 「分配」
・・・ 政子さんは、何でも芳子さんと同じにして大きくなりました。同い年で小学校を卒業し、同い年で同じ学校に入り、両人は真個の仲よしで行く筈なのでした。 芳子さんは、政子さんが、自分よりは可哀そうな身の上であるのをよく知っていましたから、い・・・ 宮本百合子 「いとこ同志」
・・・ この時分の心持を今私の目前に育って居る丁度同い年位の弟にくらべるとまるで及びも付かない程私の心は単純であった。 彼は第一もう「ああちゃん」などと云う言葉は五つにならない位からやめて居るし、人が死ぬと云う事に対しても、勿論空想化され・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・それを、心持を忍んで、また、皆の裡に戻って来たおつやさんのしおらしさが、同い年であった自分に、いいようのない感銘を与えたのである。 おつやさんも、恐らく死ぬ迄、その時の心持は忘れ得なかったろう。 彼女が死んだときいた時、先生の心には・・・ 宮本百合子 「追想」
・・・明治三十二年に女学校令というものがきめられて以来、女学校と中学校とは同い年で小学校を終った男の子と女の子のための学校でありながら、五年を終業したときの程度は、ずっと女の子の方が万事について低いものとして肯定されて来ている。専門学校、大学とい・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・その中にはまだ私と同い年の位の小供から大人になる境の丁度小供の蛙みたいなととのわないみっともない形と声をもって居る男も交って居ました。そんな男を見るたんびに私は下等なきたない事ばっかりを思い出して一々知らず知らずに眉をひそめて行きすぎたあと・・・ 宮本百合子 「芽生」
出典:青空文庫