・・・にしてくれないかと云ったら、お雛さんの時の、菱餅の様になら出来ると云うので、それをもう少しうすく四角く大きくして呉れと云ってやる。寸法と厚さを持って来た帳面に書いてやる。わかった様にうけ合って行ったけれ共、どんなものが出来上るやらわからない・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・番頭は婦人客の前へ跪き、妙な恰好に指をひろげて靴の寸法を計る。婦人客の足にさわる時は、まるで、今にもその足がこわれるかと思うように大切に扱う。ところが「その女の足ときたら――太くてまるで撫で肩の徳利を逆にしたようだ。」 時によると、女客・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・こに縞の入った卵があるとか、合歓の花の咲く川端の窪んだ穴に、何寸ほどの鯰と鰻がいるとか、どこの桑の実には蟻がたかってどこの実よりも甘味いとか、どこの藪の幾本目の竹の節と、またそこから幾本目の竹の節とが寸法が揃っているとか、いつの間にか、そん・・・ 横光利一 「洋灯」
・・・もとよりその詳細な測定や記述の仕事は、今後に残されているでもあろうが、しかしわれわれのような素人が、推古仏の源流を求めていろいろと考えてみるというような場合には、これで十分である。寸法が精確に測定されていながら、写像がぼんやりしているよりも・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫