・・・ 自分達の生活――それは、実利的な、独善的な――たゞ、それが支障なく送られゝばそれでいいという考えから、広く人類について、また社会について、考える必要がないとでも思っているのではあるまいか。 そういう人達にとっては、人間に対する、真・・・ 小川未明 「人間否定か社会肯定か」
・・・馴れた心から、けろりと忘れた振りして、平気で嘘を言い、それを取調べる検事も亦、そこのところを見抜いていながら、その追究を大人気ないものとして放棄し、とにかく話の筋が通って居れば、それで役所の書類作成に支障は無し、自分の勤めも大過無し、正義よ・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・ この考えを実証すべき例証をここに列挙することは略しても、こういう考えがそれ自身なんら新しいものでないことは読者に明らかなことである以上、現在の考察を進める上にたいした支障はないであろう。自分のここで言おうとすることは、そういう考えを承・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・これを省くとも鉄道運河の大体の設計にはなんらの支障を生ずる事なかるべし。これに反して荷車を挽く労働者には道路の小凹凸は無意味にあらず。墓地の選定をなさんとする人には山腹の崖崩れは問題となるべし。 世人の天気予報に対する誤解と不平は畢竟こ・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・強いて云えば天気の晴曇や日常の支障というような偶然の出来事のために一日早く見付けるかどうかという事が問題になるだけであろう。 この説明は子供には、よく分らないらしかった。 そのうちにまた曇天が続いて朝晩はもう秋の心地がする。どうかす・・・ 寺田寅彦 「小さな出来事」
・・・何か特別な支障のない限り。[自注6]詩人――プロレタリア詩人、今野大力。『戦旗』とプロレタリア文化連盟関係の出版物編輯発行のために献身的な努力をした。共産党員。一九三二年の文化団体に対する弾圧当時、駒込署に検挙され、拷問のビンタ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫