・・・後生願いの良い婆さんだから私に、本願寺にお参りさせて呉れろと云う。案内して呉れと云うのか私の金で連れて行ってくれと云うのか分らない。 一つ二つ短かい距離を行く間に「あみださま」に関した話をして聞かせた。 あんまり御噺(話めいて居るの・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・思想犯として刑期を終った出獄者を、そのあとまでもかためて住わせて思想善導をしようとして、本願寺が、この建物をこしらえた。国分寺の駅からよっぽど奥へ入った畑と丘の間の隔離された一郭として、これをこしらえた。十月十日、出獄した同志たちは、治安維・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ もとから市の無料宿泊所や本願寺のお粥の接待に列の出来ていたことは周知の事実でもある。砂糖が切符になる前に砂糖やの前に出来ていた列、この頃は食事時間に丸の内辺の食堂のぐるりにも出来る列。列は整頓の形でありながら、常にその奥に何か足りない・・・ 宮本百合子 「列のこころ」
・・・ 大野の想像には、小倉で戦死者のために法会をした時の事が浮ぶ。本願寺の御連枝が来られたので、式場の天幕の周囲には、老若男女がぎしぎしと詰め掛けていた。大野が来賓席の椅子に掛けていると、段々見物人が押して来て、大野の膝の間の処へ、島田に結・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫