・・・とである。仏教巫徒の「よりまし」「よりき」の事と少し似てはいるであろう。 仏教が渡来するに及んで咒詛の事など起ったろうが、仏教ぎらいの守屋も「さま/″\のまじわざものをしき」と水鏡にはあるから、相手が外国流で己を衛り人を攻むれば、こちら・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・小さい並木路を下るときには、振り仰いで新緑の枝々を眺め、まあ、と小さい叫びを挙げてみて、土橋を渡るときには、しばらく小川をのぞいて、水鏡に顔をうつして、ワンワンと、犬の真似して吠えてみたり、遠くの畠を見るときは、目を小さくして、うっとりした・・・ 太宰治 「女生徒」
・・・彼は自分の醜い姿を水鏡に映して見て、抑え難い歓喜を感じるらしい。彼はその歓喜を衆人の前に誇示して、Faun らしく無恥に有頂天に踊り回るのである。私たちに嘔吐を催させるものも、彼には Extase を起こす。私たちが赤面する場合に彼は哄笑す・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫