・・・――ヴィクトリアの秋―― これは、半熱帯の永劫冬にならない晩秋だ。夕暮、サラサラした砂漠の砂は黄色い。鳥や獣の足跡も其上になく、地平線に、黒紫の孤立したテイブル・ランドの陰気な輪廓が見える。低い、影の蹲ったようないら草の彼方此方・・・ 宮本百合子 「翔び去る印象」
・・・ まるで、風土文物の異った封建時代の王国の様に、両家の子供をのぞいた外の者は、垣根一重を永劫崩れる事のない城壁の様にたのんで居ると云う風であった。 けれ共子供はほんとに寛大な公平なものだとよく思うが、親父さんに、「おい又行く・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・ どうせじきにやめるのだから、給料はどうでもいい、小遣がありさえすれば、ということは、本当に生活の必要から働く女のひとの給料を永劫にやすくしておく一つの条件となるだけでなく、娘さんの生活感情に変な無責任さをも与えてゆくと思う。この社会に・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・ 性格と性格の組合わせで、母のような人には、相手からフランクに出なければ永劫うまく行かない。処が、Aは、自分に観察的であるなと直覚した者に対しても、猶、朗らかで、構わず自分を表わす丈の、大きさはない。誘い出される好意がなければ出て来ない・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
出典:青空文庫