・・・ところが、私が大阪から歩いてわざわざ会いに来た話をすると、文子はきゅうに私が気味わるくなったらしく、その晩泊めることすら迷惑な風でした。私はそんな女心に愛想がつきてしまう前に、自分に愛想をつかしました。思えばばかな男だった。ところが、ますま・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・ そして安子はとりとめない友達の噂話をはじめながら、今夜はこの家で泊めて貰おうと思ったが、ふと気がつけばお仙はともかく、お仙の母親は、界隈の札つき娘で通っている女を泊めることが迷惑らしかった。安子はしばらく喋っていた後、「明日もしう・・・ 織田作之助 「妖婦」
・・・奥もかなり広くて、青山の親戚を泊めるには充分であったが、おとなから子供まで入れて五人もの客が一時にそこへ着いた時は、いかにもまだ新世帯らしい思いをさせた。「きのうまで左官屋さんがはいっていた。庭なぞはまだちっとも手がつけてない。」 ・・・ 島崎藤村 「嵐」
出典:青空文庫